技術書典9 オンラインマーケット利用サーベイ

技術書典 主宰 @mhidaka です。
技術書典10(2020/12/26〜2021/01/06)の開催にあわせて、技術書典9のオンラインマーケット販売に関する調査を公開します。

技術書典とは

技術書典とは技術書のイベントで、広く技術のことについて知れるお祭りです。
技術書典は、いろんな技術の普及を手伝いたいとの想いではじまりました。

2020年の技術書典は新型コロナウイルス感染症の状況を鑑み、いずれもオンライン開催となりました。以前は池袋サンシャインシティを借りてのリアル開催でしたが、2021年以降はオンラインとリアルの長所をミックスした同時開催を予定しています。

技術書典9開催情報(振り返り)

第9回の技術書典はインターネット上のオンラインマーケットという形で開催しました。新型コロナウイルス感染症の影響もあり外出が難しい時期であることから、どなたでも来場でき安心して利用いただけることを目指しました。

会期を通じた購入者数は9,100人、頒布総数は43,000部です。

第9回 技術書典
期間:2020年9月12日(土)~2020年9月22日(日)
場所:技術書典オンラインマーケット
サークル参加:約340サークル
購入者:9,100人

購入者数は有料・無料を問わず、書籍を手にした技術書典アカウント9,100人です。カウントはオンラインマーケットの販売情報から統計情報を取得しました。期せずしてインターネットでの開催となったことで分析対象が100%です。以前は、かんたん後払いというシステムで流通量の20%をカバーし、出展者アンケート結果と整合性チェックすることで統計値を算出していました。今回のマーケットサーベイは完璧な数字を得ていますが、外れ値の除去等を行っていますので細かい数字はばらつきがでるケースがあります。

会場環境

2020年3月の応援祭に続き、2回目のオンライン開催です。販売促進のための取り組み、Amazon Pay対応など機能面でもブラッシュアップや挑戦の多いイベントとなりました。

  • オンラインマーケットでの開催
  • 電子書籍をダウンロードできる本棚機能
  • 書籍内容の全文検索の提供
  • 購買統計を活用した推薦機能の提供
  • 通販の取り扱い刷新
  • 書籍紹介を行うライブ配信

技術書典9では電子書籍に加えて紙の書籍も取り扱っています。出展者の保有する紙の書籍を事務局に送付してもらい、会期終了後にまとめて送付する通販を実施しました。

オンラインマーケットで提供している全文検索は書籍を解析し、ページ全文を検索できる専用のシステムです。推薦機能は購買情報から合わせ買いをお勧めする類書発見のためのシステムで、こちらも専用に開発しました。また技術書典9にあたって次の日程でライブ配信を生放送しました。

これらのキャンペーンは販売促進を目的に書籍の紹介、オンラインマーケットの使い方解説などPRしています。技術書の紹介が好評でチャンネル登録者数は1000名弱を獲得しました。

出展費用について

技術書典9の参加費は無料ですが、イベント期間中の販売手数料を20%としました。ただし売上金額が20万円を超えるまでは、販売手数料は0%で提供しています(技術書典10では0%適用の条件が異なります)。

今年は新型コロナウイルスの影響もあり、イベント数が激減していることからも出展者支援を目的に手数料の無料枠を設けました。20万円という数字は前回の応援祭の統計情報をもとに十分大きな値となるよう調整、決定しました(参考情報として技術書典 応援祭の出展サークルの書籍の頒布は平均値:85冊、中央値:36冊です)。

平均的な出展者は技術書典オンラインマーケットでのイベント3回分程度、無料で楽しんでもらえる設計です。詳しい方は気づくかもしれませんので書き添えるとクレジットカードなどの決済にかかる費用は販売金額の8~12%程度です(書籍が500円の場合、決済手数料として3.6%+40円、金額に対して11.6%を決済プロバイダへ支払います)。この費用およびホスティング費用など運営にかかる人件費等は事務局が負担しています。

筆者注:黒字化したらいいなとは思いますが、まずはオンラインのように形を変えても技術書をファンに届け続ける継続性を念頭にこうなりました。新しいことを始めるとき、だれもが大変なはずですので出展を支援したいと考えての決定でした。運営儲かってくれ~ってなったひとへは、いつかお願いするかもしれません。今はオンラインマーケットを使ってください!購入を通じて出展者へ還元できることがコミュニティや技術を育てることへの、なによりの贈り物だと思います。またリアルやオンラインイベントで一緒に盛り上がろうね!

振り返りレポート

ウェブ上には参加者による来場レポートなどがあります。さがしてみてください。以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。たくさんになってきました。あわせてどうぞ。

本の対象範囲

技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?

技術書典はハード、ソフト、機械、科学、組織、エンジニアリングに関わるライフスタイルや考察、その他これらの応用分野、教育など技術ジャンルを問わず「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。

サーベイを通じて

マーケットサーベイは頒布部数を競う目的で公開しているものではありません。技術的な創作活動と向き合うための参考資料として提供しています。

技術書典への参加目的は出展者、一般参加者、いずれも動機は自由であるべきだと考えています(そのために、お互いを尊重する行動規範やアンチハラスメントポリシーがあります)。広く技術を届けたいという想いからたくさんの本を用意する人や、初めてでどのような場である基準がわからない人の不安を解消したいと考え、調査結果・分析の数値は客観的事実に基づくように細心の注意を払って確認し公開しています。

我々は、どなたにも技術書典というお祭りを楽しんでほしいと考えています。活動経験の有無や誰かの価値観を基準に評価することは望んでいません。個々人の充実感、達成感、価値観を基準として分析を活用してください。

これらの分析を新しい挑戦をする参考指標としたり、自らの表現の幅や知識的探究を深めるために利用したり、興味本位でやってみた!推したい!俺より強いやつに会いたい!でも大丈夫です。技術が面白いと感じる方向へ突き進んでいただけると嬉しいです。

また新型コロナウイルス感染症の影響化における数少ないイベント開催の資料としてこの記事が後世に残ることを期待しています。

マーケットサーベイ(まとめ)

マーケットサーベイは、技術をたくさんのひとへ伝えられたかという指標としての頒布数、価値を感じてもらえるか創作活動を支えることができているかという指標としての流通金額を中心に集計しています。もちろん出展や頒布を支えるのは技術や創作が楽しいという気持ちです。そのためマーケットサーベイがすべてを計測できているとは考えていません。創作活動を支え、円滑な運営を行うために数字での表現ができる部分を可視化し、マーケットの状態を把握しようという試みです。

購入トランザクションを統計処理した結果からは期間中の全サークルの頒布は43,000部、購入者一人あたりで4.7冊の流通量とわかりました。内訳は次のとおりです。

  • 頒布部数:43,000部
    • うち紙の書籍:5,500部
    • うち電子書籍:37,500部
    • 出展:約340サークル
  • 購入者数:9,100人
    • 平均購入:4.7冊
    • 紙の書籍:平均1,250円
    • 電子書籍:平均880円

平均単価の計算には無料配布分を含んでいません(有償配布のみが集計対象です)。オンラインマーケットでは全体の87%が電子版の購入です。購入者数は前回のオンライン開催に比べて1.5倍と急激に増加している点が特徴です。

前回との比較

2020年3月の技術書典 応援祭と2020年技術書典9は同じオンライン開催ですので、この2回分を比較しました(第7回までの技術書典はオフライン開催ですので直接比較の対象にはしていません)。

応援祭と技術書典9の比較

オンラインマーケットの会期は応援祭が約30日間、技術書典9が12日間とそれぞれ異なっています。前回から参加者数が150%、頒布数が140%増加している事実が確認できました。過去の実施経験から参加者数に比例して頒布部数も伸びることがわかっていましたがオンラインマーケットでも似た傾向があると確認できました。

書籍の内訳については応援祭では紙面が5%、電子書籍が95%でした。技術書典9では紙面が13%、電子書籍が87%に変化しています。これは送料負担の仕組みを購入者(400円)から出展者負担(1冊100円)へ変更したことや発送を会期後の一括送付として受け取りの手間を省いたことなど改善の取り組みが体験向上につながったと推測しています。

紙の書籍単体でみても流通量は前回比で3倍程度に増加しています。全体の流通量の上昇率に比べても2倍程度の著しい増加です。送料の負担変更および即時送付から会期後の一括送付への変更など受け取りの手間という購入者のペインポイントを排除できたこと、購入直後に電子書籍が読める体験設計が奏功し、受け入れらました。

出展の傾向は紙の書籍があるほうが頒布数が伸びる(紙が欲しい人と電子が欲しい人の両方にリーチできる)ことがわかっています。一方、電子書籍の平均単価も880円と低くないことから知識に対して価値を感じているという技術書らしい側面が読み取れます。

書籍の統計

技術書典9で頒布された書籍は1200品種です。新刊と既刊の内訳は次のとおりです。

  • 新刊:300品種(25%)
  • 既刊:900品種(75%)

出展者は技術書典 応援祭を経験していたこともあり、新刊の比率が低減し、全体的に品種が増えています。オンラインマーケットでは出展者ごとに品種がストックしていくため(電子書籍は在庫等の概念がないため)この傾向は今後も同様と考えています。出展参加は約340サークルですのでほぼ1サークルにつき1冊弱の新刊を用意していました。

全頒布部数43,000部に対するそれぞれの比率も紹介します。

  • 新刊:24,000部(56%)
  • 既刊:19,000部(44%)

新刊の定義は2020年4月以降の発行日としました。例外はあるものの最新情報が好まれる傾向にあります(書籍次第では上記に当てはまらない傾向の書籍もありました)。

これまでのイベントどおり新刊が好まれるというのは間違いなさそうです。技術書典9では規模が1.5倍に拡大している点からもファンの新規流入が多い状態といえます。この様な状況では既刊でも頒布数が伸びる傾向があります。より詳しい分析のためには書籍の発行日での分類ではなく、オンラインマーケット登録日での分類や動向にも注目する必要がありそうです。

出展の統計

出展者が技術書典9の開催中に得た総売上金額は2,750万円です。新刊・既刊の構成比率は次の通りです。

  • 新刊:1,850万円
  • 既刊:900万円

技術書典9に参加した約340出展の頒布数、売上高についても平均値・中央値を算出しました。

  • 頒布部数(出展)
    • 平均値:130冊
    • 中央値:54冊
  • 売上高(出展)
    • 平均値:80,000円
    • 中央値:34,000円

無料での配布のみの出展者、オンラインマーケットで書籍を1冊も販売していない(いわゆる出展申し込みのみの活動実績の伴わなかった)出展者は除外しています。

出展者ごとの統計では頒布傾向は濃淡があることがわかっているため5段階ヒストグラムで出展ごとに調査しました。横軸に頒布数を取り(1,51]、(51,101]、(101,151]、(151-200]、(200,<]の5つのグループで分類し、縦軸に出展数を積み上げています。

出展の傾向(5段階ヒストグラム)

こちらのヒストグラムでは頒布実績がない0冊のケースとサンプル数が少ないプロット1000冊を超える大規模なケースを割愛しています。統計の作成に際して利用した頒布者数は、オンラインマーケットの実数を集計しているので実需と一致しています。

出展の傾向把握とあわせて過去実績(前回の応援祭)とサークルごとの頒布数、売上高を比較したところ、概ね30%~40%向上を確認できました。

出展者ごとの比較

向上の背景には技術書典9の購入者数が9,100人と1.5倍の規模であったこと、紙の書籍の平均単価が1,250円と上昇傾向かつ通販ボリュームが3倍に伸びたことが要因だと考えています。紙の書籍を取り扱っている出展者ほど売上高が伸びた傾向も影響があったと推測しています。

技術書典9の開催時期(2020年9月)にはオンラインイベントの認知が進んでいた点、新規ファンが流入した点、そして紙の書籍や電子書籍など好きな媒体で技術書を読みたいというニーズへのマッチ、技術を楽しみたい・応援したいという盛り上がりが後押ししたのかも知れません。

売上高の内訳

出展する立場ではファンへ技術を届けるのに新刊・既刊がどの程度の寄与するのか気になるところだと思います。売上の内訳も追加調査しました。

  • 有償で頒布された新刊

    • 220品種
    • 平均値:85,000円
    • 中央値:39,000円
  • 有償で頒布された既刊

    • 680品種
    • 平均値:12,000円
    • 中央値:6,500円

新刊の平均値・中央値とも出展平均・出展中央値を超えています。内訳を見ると出展単位と異なる傾向ですが、これは新刊を頒布した出展者と既刊のみの出展者での差が大きいことを示しています。特に既刊はオンラインマーケットとなったことが影響し、イベント回数を重ねるごとに品種が増加しています。このような背景から中央値は下降傾向です。

今後、開催を重ねると発掘が徐々に難しくなる可能性があったため、より詳しい調査をしてみたところ複数の要因が影響していそうです。大抵の出展者は、新刊を用意した際にPRを頑張るが、既刊のみのときは気後れしてPRが少なくなる傾向があります。オンライン開催の場合、ソーシャルメディアでのPRがファンの流入に直結しやすく(実際にTwitterなどでの発信数に比例する傾向にあります)、その結果、既刊だからと発信が少なくなると頒布傾向にデバフ(マイナス効果)がかかると推測しています。PRがうまく流入量が多い出展では既刊だけであっても上記とは異なる傾向(新刊に近い頒布となる)がでているため引き続き検証していくと共に個人のテクニックに依存しないマーケット設計(アイデアの実装)をしていく必要性を感じています。

技術書典9では技術書典アワードのようなピックアップや特集が一定の成果を出しつつあるので、これらが解決策になるか今後も継続して改善していきたいポイントです。

出展者へのサポート

技術書典では初めての人向けのサポートを充実していきたいと考えており、初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。

メンバーになると、勉強会の開催時に通知が届きます。技術書典ならではの工夫、編集や出版のサポートを目的とした場所です。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。

主宰雑感

ここからさきは主宰雑感コーナーです(急ぐ場合は、まとめまで読み飛ばしても問題ありません)。

技術書典ではマーケットサーベイ作成にあたり、さまざまな仮説と検証をしています。ここは機械学習エンジニアとデータ解析のプロが担当してくれているパートです。因果を証明するに至らなかった仮説が山程あるのですが、そのなかでも面白かったものを紹介して供養とします。本来、棄却された仮説というものは仮説の因果が証明できなかっただけなので鵜呑みは厳禁です。雑感を通じて見えないところも色々調べてるんだな、と感じて貰えればうれしいです。

仮説1.参加回数が多いほど頒布に有利である: 棄却

もともとの直感として参加回数が多い出展者ほど知名度がでてきて固定ファンを獲得しているだろう=頒布数に固定のボリュームが見込めるので結果的に有利に働いてるのではという検証アイデアがありました。そこで技術書典への参加回数と頒布数に因果があるかを検証してみました。なお固定ファンの定義は「これまでに同一出展者から2冊以上購入しているファン」としています。

調査の結果、因果は証明できませんでした。参加回数は要因としては小さく、別の要因で頒布数が導かれている可能性が高いと判断するに至っています。出展者の規模や継続参加というアクションは固定ファン獲得にそこまで影響してなさそう(固定ファンそのものはキチンと存在しているのですが回数には非依存で内容やシリーズに依存があるのかもねということ)です。

ここからわかることは長期的に人気がある出展者は必ずしも固定ファンに支えられているわけではなく頒布の戦略として新規購入者も取り込めるPRや技術書づくりを行うことが大事そうです。

これはシリーズ物を除くと技術書の内容とかジャンルとか全く別の要素が頒布の支配的な要素であろう、多分…わからんけど…。みたいな考えです。仮説では結果をみて怪しいなと感じるときがあります。今回も追加の制約として同じくらいの頒布部数の出展同士で、ユニークなファン数(初めて購入してくれたファン)を比較して差がでるかを検証(参加回数が多いサークルほどユニークなファンが少なく固定ファンに支えられる形になるのでは?を検証)したのですが、やはりこれも棄却されてしまいました。

ちなみに技術書典特有の面白い傾向として開催ごとの新規出展者は25%程度もいます。新しい人々がコミュニティに参加してくれている傾向があるわけですが、このような状況ではベテランと新人という関係が成立せず、ある種未成熟かつ成長途中のイベントゆえの健全性があるのかもしれません。

これらの検証は良し悪しを判断するというより、特徴があるという事実に基づいて技術の普及やファンとのリレーション構築に効果的なアプローチを探す主旨で頑張って調べています。それでは次の仮説にいきましょう。

仮説2.頒布する品種が多いほど、まとめ買いしてもらえる: 棄却

オンラインマーケットでのファンの平均購入は5冊弱ですので、複数の書籍をゲットしている内訳は出展単位(=技術や著者のファンである)かもね、という観点で調査しました。現在のところ結果は棄却されています。もちろん頒布している品種が多いほど購入されている傾向はありましたが、おもったより全然、強くありませんでした。ファンのみなさんは好きな本を好きなように買っています(人間のもつ嗜好にあわせた自動分類や推薦がいかに難しいかがわかりますね)。

なお技術書典では「買い物かご」という概念がありません。そのかわりすぐに買えるボタンのみがあります。なぜかというと書籍の購買というのは他のプロダクトと異なり、ほとんど1点買いである傾向があるためです。もちろん濃淡がありますが利用シーンはオンラインマーケットを開いてじっくり眺めて吟味するより、飛び込んで気になる本をすっと買って離脱する、また来て同じ行動を取るファンが多いという状況です。このような状況では買い物かごを用意しても、いわゆる「カゴ落ち」による購入からの離脱リスクが相当に高く、積極的に採用する合理的試算を導くに至っていません。

たとえば技術書典9でうまれた「会期後のまとめて発送」はカゴ落ちの課題を解決しつつ、技術をファンにリーチするアイデアとして生まれたものです。今回の検証も、まとめて買うボタンあると嬉しいのでは?と思って調べてみたのですが、現時点では実装コストをペイするだけの効果は得られなさそうという結果で終わりました。くじけずに次の仮説にいきましょう。

仮説3.おすすめ機能は特定の出展者へ有利に働く: 棄却

今回の仮説は前述のような背景で「おすすめ」機能がどのような利用傾向にあるかを調査したものです。運営の提供するおすすめ機能は気になる技術書をゲットしにきたファンに対して、類似の書籍を提示することで買い周り(興味のある技術書をファンに届けられるよね!)という発想で提供しています。コンバージョンもよくそこそこ使われていて嬉しいのですが機能の性質上、特定ジャンルに特化した出展者がたくさんの品種を頒布していれば自然とおすすめされやすくなり、強く推薦される結果になっているのでは?と疑問がでてきたので仮説をたててみました。

ファンのオンラインマーケット購買動向から結果を確認したところ仮説は棄却されました。かなり公平に購入されていることがわかりました(もちろん特定の技術分野に1出展者しかいない、、、みたいなニッチが強いケースがあるので、あくまで統計的にみたときに違和感がある特異点が検出されなかったというだけです)。

技術書典では面白い傾向に、ニッチが受け入れられる(なぜか爆発的ともいえる頒布を記録することが多い)というのがあります。たぶん業務で使わなくても技術的な面白さをファンが楽しんでくれている、読者層の審美眼が面白さ重視…みたいなのがあるとおもいます。主催自身も技術的探求が垣間見える本は大好物です。知らないジャンルであっても目がとまってしまいます。実益とは別ですね。このような広く技術的探求を受け入れる傾向もとても好ましく感じています。

今回は3つの棄却された仮説を取り上げて解説しました。日々、技術の普及とリレーションシップ構築を目的に調査しています。また機会があれば紹介します。

まとめ

第9回 技術書典はオンライン開催となりました。2020年3月開催の応援祭では技術書典7や8の規模に対しておおよそ半分の開催規模と実績でしたが、技術書典9での出展傾向を見ると(出展者視点では)技術書典7と同等の頒布・売上高となりました。実績が応援祭に比べて140~150%の結果だったことは主催としては想定以上の伸びです。紙の書籍も流通量にして3倍に向上して受け入れられています。ささやかながら印刷所支援や出展支援ができたのであれば嬉しい限りです。

新型コロナウイルス感染症の状況を鑑みるとオフライン開催の難しさは続きそうですが、2021年はオフライン開催も含めて計画を練っています。技術書典の将来像ではオンラインマーケットの長所とオフライン開催の長所どちらも取り込んだ新しい運営形態を目指すことになります。

今回のマーケットサーベイからは明るい話題・おもしろい発見もありました。遠隔地からの参加が増えていること(地理的制約からの開放)、オンラインマーケットで技術書を買った購入者の8割程度が初参加です。他方で、出展者数はオフライン開催に及びません。現地での化学反応的な面白さ、体験は代えがたいものがあります。オンラインマーケットを活用した購入ハードルの低さと合わせて、どちらの魅力も取り込みたいと考えています。

我々はテクノロジーを活用することで今まで以上に幅広いファンへ技術を届けたいと考えています。環境の変化もあり現時点では足りない機能・パーツも多いのは偽らざる現実ですが、いつもの技術書典らしく新しいチャレンジのなかで解決できればと考えています。

技術の普及とリレーションシップの構築を目指して、お祭りとしてイベントを開催していきます。出展者がもつ技術への探究心・知識欲、それらを支える情熱を詰め込んだ技術書を大切にし、技術の普及を手助けしていきます。ファンと技術を繋いでお祭りが大きくなっていければ素晴らしいことです。

2020年を振り返ると最適な解は主催にもわからないシーンが多いというのが正直な気持ちです。急にオンラインマーケットができたり、突然に発送システムが変わったり、予期しない変化がこの先も待ち受けてるかもしれません。ファンのみなさんへも多くの寛容と変化への追従をお願いすることがあると感じています。回を重ね、改善を繰り返して課題を乗り越え、技術書典が受け入れられる分野・内容が広くなり、新しい技術を伝道し、技術を支えるコミュニティに発展していくことを願っています。

イベントごとに発表する新規施策は、リスクがあるチャレンジにみえるときもあるでしょう。前述ような仮説検証を通じた妥当性の検証やマーケットサーベイから導出した取り組みなど、運営の様子を知ってもらうとオンラインの距離感をより近く感じてもらえ、理解度も変わるのではと考えています。

最近ではYouTubeなどオンラインでも対話できるチャンネルを開設しました。またDiscordのような即座に反応できるチャットサポートも用意しています。オンラインだからと距離感が遠くなるのは望んでいません。もっとこうだったら良いなという気持ちはぜひ運営に直接伝えてください。

技術書典は、皆さんの技術への思いと相互の協力に支えられています。多くの取り組みと失敗を通じて、技術との出会いの場を維持していきます。技術のお祭りを一緒に作っていきましょう。出展者もますます多様になり、いろんなニッチを受け入れていきたいと思っています。誰でも技術を楽しんでいただけるようアンチハラスメントポリシーなどの整備を進めていきます。

きっと技術書典10も、2021年の技術書典も、まだまだ変化が続きます。毎回、新しい技術書典が生まれてくる姿だと感じて一緒に苦労して失敗や頒布の体験を楽しんでもらえると助かります。変化を許容し、これまで以上に面白い場となることを願っています。

技術書典10は12月26日から!

技術書典10は12月26日(土曜日)に開催します!もし、情報を取りこぼしたくないというかたはTwitterをフォローいただくか、Webサイトよりユーザ登録をしてください。

技術書典7サークル参加アンケート結果と分析

技術書典 代表 @mhidaka です。
技術書典8の開催にあわせて技術書典7のサークル参加アンケートを公開します。

技術書典とは

技術書典とは技術書のイベントで、広く技術のことについて知れるお祭りです。
技術書典は、いろんな技術の普及を手伝いたいとの想いではじまりました。

技術書典7開催情報(振り返り)

第7回 技術書典
日時:2019年9月22日(日)11:00〜17:00
場所:池袋サンシャインシティ展示ホールC/D
サークル参加:合計642サークル
来場数:9,700人(※)

第7回は池袋サンシャインシティ 展示ホールC/Dをつかったはじめての2ホール開催でした。技術書典6に引き続き、来場者数10,000人前後です。完全に行列が解消されたのは15~16時でした。

※参加者数は一般来場者のカウントとサークル入場者数を合算した9,700人です。カウントは入場口、入場フリー後はすべての入場口で実施しました。ホール間の移動は再入場として含んでいません。技術書典6の来場数は再入場を排除できない動線であったため前回と厳密には基準が異なった来場数ですが、混雑状況から以前とほぼ同等の来場人数と考えています。

会場環境

実施にあたって施設面積6,000平方メートルを使い、640サークルが技術的創作を披露し、10,000人弱が集いました。出展参加の倍率は約1.1倍です。前回の1.5倍とくらべて減少していますが依然として定数を超える申込を頂いています。

今回はフロア数を1から2へ増やしてサークル出展可能な場所を広く確保した結果、サークル出展数は36%増加しました。注目を集めたにもかかわらず事故なく終えられたことは出展参加者、一般参加者をはじめみなさまのおかげです。ありがとうございました。

大規模開催でのオペレーションとなるため安全確保を優先に運営しています。イベントで確保した面積は前回比2倍になっていますが出展サークル数の増加は36%の増加にとどまっています。こちらは施設と協議し、安全性を考慮した結果によるものです。具体的には行列の破綻防止のための待機場所を施設内部に確保、看板や案内板、上下移動のための人溜まりバッファ確保、サークルスペースの改善・通路幅の改善(100〜150cm単位での増加)などを行った結果です。

一般来場者向けの動線変更も同時に行い、60箇所以上の案内板を設置していましたが展示ホール間の移動方法がわかりにくいなど課題もありました。今回から導入した吊り看板は配置がわかりやすいと好評でした。当日は託児サービスの充実(運営負担で設置し、出展者は無料で利用できました)など参加しやすい環境づくりを進めています。またメディア取材も入りイベントとしての定着を感じています。今回、頂いたフィードバックをもとに次回の改善につなげていきます。

振り返りレポート

ウェブ上には参加者による来場レポートなどがあります。さがしてみてください。以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。あわせてどうぞ。

本の対象範囲

技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?

技術書典はハード、ソフト、機械、科学、組織、エンジニアリングに関わるライフスタイルや考察、その他これらの応用分野、教育など技術ジャンルを問わず「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。

アンケート結果

アンケートは305サークルから回答をいただきました(回答率47.5%)。回答いただきました出展者のみなさん、ありがとうございます。

アンケート結果は過去に学び、未来を掴み取る統計情報として毎回まとめているものです。次回開催の参考に使うことを想定していますが確固とした指標ではありません。各項目は必須ではない&多値回答可能ですので合計値が305になるわけでもありません。質問の文言など見切れ対応、その他および自由回答を画像から削除するなどグラフは適宜加工しています。

参加サークル調査

執筆経験について

執筆活動について尋ねました。「執筆は初めて」「コミケなど他のイベントに参加したことがある」「技術書典から執筆を開始した」「商業でも活動している」「その他」からの多肢選択式です。その他については割愛しています。

初めての人が約24.2%です。前回のアンケートでは27%でした。サークル出展ブースは前回の1.36倍に規模を拡大していますが、大きな差はでませんでした。商業誌への寄稿、著書がありプロとして活躍している実績のある方は16.6%です。「技術書典から執筆を開始した」回答が52.6%で最も多く、運営としても発表の場としての定着、コミュニケーションの場として認知されることを目指していきます。

技術書典でははじめての人向けのサポートを充実していきたいと考えており、初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。

https://techbookfest.connpass.com/ メンバーになると勉強会の開催時に通知が届きます。技術書典ならではの工夫、編集や出版のサポートを目的とした場所です。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。

調査を通じて

調査は頒布部数を競う目的で公開しているものではありません。技術的な創作活動と向き合うための参考資料として提供しています。

技術書典への参加目的は出展者、一般参加者、いずれも動機は自由であるべきだと考えています(そのために、お互いを尊重する行動規範やアンチハラスメントポリシーがあります)。広く技術を届けたいという想いからたくさんの本を用意するひとや、はじめてでどのような場である基準がわからないひとの不安を解消したいと考えて調査結果・分析の数値は客観的事実に基づくように細心の注意を払って確認して公開しています。

我々は、どなたも技術書典というお祭りを楽しんでほしいです。活動経験の有無や誰かの価値観を基準に評価することはあまり望んでいません。個々人の充実感、達成感、価値観を基準として分析を活用してください。

これらの分析を新しい挑戦をする参考指標としたり、自らの表現の幅や知識的探究を深めるために利用したり、興味本位でやってみた!推したい!俺より強いやつに会いたい!でも大丈夫です。技術が面白いと感じる方向へ突き進んでいただけると嬉しいです。

部数・部数のアンケートまとめ

アンケート結果と回答率から当日の全サークルの持込部数は257,000部、頒布部数は117,000部です。
運営事務局の用意した「かんたん後払い」利用状況から推計した統計値とほぼ合致しており、117,000冊の技術書は参加者一人あたりで12.0冊の流通量です。

内訳は次の通りです。

  • 持込部数:257,000部

    • うち紙の書籍:157,000部
    • うち電子書籍:100,000部※
  • 頒布部数:117,000部

    • うち紙の書籍:87,000部
    • うち電子書籍:30,000部

※電子書籍は公式サポートを開始した関係で割合が増えてきています。技術書典では電子版を用意したら在庫切れがなくなる環境に近づいてきていることから合算表記は今回で最後(前回アンケートから進めていましたが今後は紙面と電子を分離して扱っていきます)になりそうです。在庫という概念が適さないため以降の数値は、断りがないかぎり紙の書籍をベースとしたものです。

持込部数257,000部は前回より20%増加しており、過去最高値です。
紙の書籍157,000部に対しての頒布お持ち帰り率は54.3%でした。会場に持ち込まれた紙の書籍の54%が当日のうちに読者に届きました!

かんたん後払いの流通総数に対する利用率も20%程度になりました。ダウンロード機能、会計の簡単さなどで価値を見出して使って頂いてます。運営としてもサークル配置場所への到達や購入への障壁を下げていく場づくりを通じて面白い技術との出会いを推進できれば大変うれしく思います。

持込部数の詳細

当日、持ち込んだ数はサークル単位では平均245部です。新しく書き下ろした新刊と過去の技術書典で配布した実績のある既刊に分離して計算しているので内訳も掲載しておきます。この内訳は1品種ごとの統計値で、サークル単位の平均ではない点に気をつけてください。

  • 新刊1品種あたり:平均140部、最頻値 100部、中央値100部
  • 既刊1品種あたり:平均67部、最頻値50部、中央値40部

新刊の平均値は前回より約10%程度下落しています。サークル数が470から642へ36%増加している関係で総数は増加傾向です。最頻値、中央値はともに100部です。既刊は平均67部、中央値は40部です。

新刊・既刊の頒布

持ち込み傾向をみるとこれまで通り95%超のサークルが新刊を用意しています。既刊は5割強です。

  • 新刊:平均1.4タイトル(1サークルあたり)
  • 既刊:平均タイトル数割愛(サンプル偏りにつき)

なお既刊では1〜2品種持ち込む場合の部数は大きめです。過去の傾向からは既刊持込の75%が該当しています。3品種以上を持ち込む場合では1品種あたりはより少部数になります。出展者の頒布方針によって変わるため平均値を省略としました(実態より離れるため)。

新刊については次のとおりです。

頒布傾向

アンケートでは4種類以上もありましたが割愛しています。平均的なサークル像は新刊は100〜150部の持込みです。たとえば新刊を1タイトル150部、既刊を1タイトル50部用意していればサークル単位の持込部数は合計200部です。平均1.4タイトルの新刊を用意しています(2タイトルを用意した時点で持込部数の合計が200〜300部になる)。新刊と既刊の持ち込み比率は10対5です。おおよそ5割強のサークルで既刊を扱っています。

サークルと持込部数、頒布価格

前述の結果を踏まえてアンケート回答者のうちサークル調査「執筆は初めて」群(全体の25%、初参加)と「過去に執筆経験がある」(75%、2回以上)に分けた場合の持込部数は次のとおりです。

  • 初参加 サークルあたり持込平均:180部
  • 2回以上 サークルあたり持込平均:280部

これらは新刊・既刊の品種が合算されている点に注意してください(またアンケートは自由回答なので合算しても結果が一致しません)。どちらも前回調査より微減していますが傾向に変化はありません。出展者の参加歴が大きなファクターであることにかわりありません。頒布傾向などの分析は後段でフォローしていきます。

現在の所、売り切れと価格帯の相関は得られていません。基準値は1,000円/冊と考えて良さそうですが数百円から2,000円を超えるものまで幅広く価格帯が存在しています。詳しい分析は技術書典5の「かんたん後払い」統計情報の解説記事が参考になります。

頒布傾向に1,000円でXXページ必要といった内容は導出できていません。直感的には会場で見かけた面白そうな本が次も残っていることは考えにくいため「良いと感じたらすぐに買う」という行動が優先されていると想像しています。

内容が尖っていても一般参加者に響いて「面白いな」「これなら読みたいな」と感じたら価格をほとんど気にせず購入していると推測されます。

頒布部数と完売率からみる全体傾向

サークルアンケートからは当日の頒布部数はサークル平均154部、完売率が36%でした。前回の平均187部、59.4%から23.4ポイントの減少です。

アンケート結果

こちらはより詳しい分析が必要でしょう。アンケートより持込部数(紙の書籍のみ)ごとサークルを分類しました。

アンケート結果

X軸はサークルの分類で、持込部数に合わせて5分割したグループです。Y軸は頒布率で0.0であれば在庫すべてが残っている状態、1.0であれば完売を示します。0.5であれば半分が頒布されたという状態を示します。

X軸のグループは左から「0から50部の持込」「50から100部持込」「100から300部持込」「300から500部持込」「500部以上の持込」です。グラフのボックスは25〜75%の範囲を示しています。ボックスの上下にでている線は上端から5%値、下端から95%値までの範囲です。のこりの0〜5%、95〜100%の両端5%位置にあるデータは外れ値としてグラフからは除外しています。

技術書典で該当サークルがもっとも多い「100から300部持込」を見ると25〜75%範囲(つまりサークルのうち真ん中あたりの半分は)0.4〜0.8の中央の範囲に分布しており、4分の1は0.8以上(完売を含む)、残りの4分の1は0.2〜0.4に所属しています。

グラフからは次のことがらが読み取れます。50部未満の持ち込み数では需要に対して少なすぎた傾向がある。300〜500部を持ち込んだグループは全体的に余り、500部以上を持ち込んだサークルでは持ち直しているという傾向が読み取れます。

今回、サークルの規模に応じて確認できるようにデータを分類しましたが印刷部数が50/100/200などキリがいい数字に集中することから切りの良い範囲で5群としました。

サークル単位での頒布傾向

今回、紙の書籍と電子書籍の頒布を行ったサークルの頒布部数の平均は次の通りです。

  • 紙面の頒布平均:133部
  • 電子の頒布平均:48部

これらは品種を合算したサークルごとの平均値ということは気をつけてください。紙も電子も扱うサークルの場合は、頒布部数の平均は合算した181部です。これは電子のみの取り扱いや紙面だけの場合などサークルごとに事情が異なるため参考値としてください。

前述の完売率36%という結果は出展サークルの単純増加が影響しています。来場者数に前回から大きな変化がないためです。前回に比べると来場者の需要を満たしている現状が見て取れますが、さらに別の角度からサークル頒布状況を分析すると次のようなデータが得られました。

  • 初参加 サークルあたり持込平均:180部 頒布平均:120部
  • 2回以上 サークルあたり持込平均:280部 頒布平均:140部

2回以上参加しているサークルが全体平均245部を超える部数を持込み、半数を頒布しています。初参加のサークルは保守的な部数見積もりで持ち込んでいます。また初参加と2回以上での頒布平均は、持込部数の差(100部)よりも小さい20部であることが読み取れます。

この傾向の要因はいくつか考えられそうですが、サークル出展に使える広さは一定のため、目の付きやすさやジャンルの違い、SNSなどでのPRの違いなどがあるかも知れません。また技術書典では当日の出展ブース配置は、タグをつかってなるべく近い領域が並ぶように工夫しています。2冊目の扱う技術領域が出展ブースの近傍にない場合、事前のPR活動の成果に頼らざるを得ませんので頒布数がばらつきやすい傾向にあります。

頒布のトレンド

アンケートから36.6%のサークルで何らかの品種がなくなっており、紙の書籍に絞ると54.3%が一般参加者へ届けられています(電子書籍のカードなどを除いた紙の持込部数と頒布数の比率)。一般参加者あたり平均12.0冊の購入というデータからは高い購買意欲を示しています。

出展者が増えたことで頒布傾向にばらつきが広がっており、持ち込み部数は各サークルごとに熟慮が必要ですが依然として需要は高い状況です。
当日は早いサークルで13時までに完売がアンケート回答の10%、15時までが50%弱(全サークル推定値では100程度)のサークルで新刊、または既刊いずれかの品種が完売になっています。

頒布部数のトレンド

当日は開場直後(1時間以内)に新刊が売り切れたサークルが4%程度と推計できています。時間別の頒布動向を知る別の資料として、かんたん後払いでの購買動向はこのようになっています。

購買のトレンド

青いグラフが技術書典6の購入者数、赤いグラフが技術書典7です。比較のため掲載していますが利用率の向上に伴い購入者数が伸びていることがわかります。有料時間帯(11:00〜12:59)での購入が多く、それ以降はなだらかです。落ち着く要因としては売り切れや有料時間帯の購買意欲が高いなどが主因であると推測しています。かんたん後払いユーザーは購買意欲が強いひとに偏っているのでは?という疑問もありましたので各サークルのアンケート結果(頒布部数と、かんたん後払いの利用統計)を調査し、一般来場者とほぼ変わらない利用動向であると確認しましています。まんべんなく使われており、決済手段の選択肢として定着していることが伺えます。

主宰雑感

今回は、はじめての2フロア構成で実施した技術書典です。2F 展示ホールDと3F 展示ホールCでの頒布動向が違ったか追加調査を実施しました。調査には技術書典にて提供するかんたん後払いのデータを使って分析しています(全体流通の20%をカバー。一般来場者の母集団とかんたん後払い利用集団で利用傾向に違いがあるかも気になるところですので予備調査を行っています。来場時刻、利用回数などを調べた限りでは傾向の違いを示すデータは確認できませんでした)。

出展数も増加していることからサークルの規模ごとの検証を行いました。このほうが実態に近づくと考えたためです(TechBoosterのように1000冊を配るような大規模なサークルと初参加のサークルは前提とする条件が違いすぎるため)。次の表は、サークルチェック数でグルーピングして購入部数の平均・標準偏差を求めてた結果です。全体の8割となる約500サークルから得ました。

フロア サークルチェック 購入者数の平均 標準偏差 該当サークル数
2F (0, 50] 10.42 8.68 60
2F (50, 100] 22.70 11.22 99
2F (100, 300] 47.51 25.38 112
2F (300, 500] 205.00 178.78 5
3F (0, 50] 13.62 7.96 26
3F (50, 100] 20.89 14.81 62
3F (100, 300] 50.58 23.22 118
3F (300, 500] 122.81 38.79 21

※かんたん後払い利用者のユニーク数は2Fで2,120名、3Fは2,250名です。(は開区間を表し、]は閉区間です。

サークルチェック数が(0,50]、(50,100]、(100,300]、(300-500]、(500,1000]の5つのグループで調査しましたが(500,1000]はサンプル数が極端に少ないため割愛し、結果からは排除しています。有効桁数は小数点以下2位です。購入者数は、かんたん後払いの利用統計をベースに集計しています(もし一般参加全体の購入者数の平均を知りたい場合、かんたん後払いの利用率は20%なので、簡易的に購入者数の平均を5倍すると推計できます)。標準偏差が高いと購入者数のばらつきが多い(分散が高い)ことを示しています。

該当サークル数が最も多いボリュームゾーンは(100, 300]グループです。100以上300未満のサークルチェックを得ているサークル群です。全体傾向としてチェック数が増加すると標準偏差も大きくなる傾向にあることが読み取れます。これは注目規模が大きくなると購入者数もばらつきも大きくなるということを示しています。なお表中の(300, 500]グループは2Fのサンプル数が極端に少ないので参考外としました(標準偏差も大きいため妥当と判断しています)。

調査結果からは2Fと3Fでの違いは発見できませんでした。傾向としては3Fのほうがサークルチェック数が平均的に高く、事前PRの面では有利であったと考えられます。また2Fは購入者数の平均が小さめにでていることから混雑の影響があり、頒布が伸び悩んだ可能性があります(頒布環境としては不利であった可能性がある)。変わった傾向を発見できなかったので書いてはいませんが「配置が頒布に影響したか」や「サークルチェックしたひとが購買にたどり着いたか」というコンバージョン率も調べています。こちらも2Fや3Fまたは配置ブロックごとの差などは見つかっていません。

これまでの統計データから平均的に「購入者の半数弱が事前にサークルチェックしている」という事実がわかっており、技術書典においては仮説が3つ考えています。「サークルチェック数という指標は出展総数に連動して重み付けが変わるのではないか」「2Fの展示ホールDは混雑により購入機会を逸失していた」「配置やブロック、ジャンルによらず購入者の半数弱はサークルチェック済みなので事前のPRなどエンゲージメント強化が有効」です。

信頼できる実績値として「かんたん後払い」利用データを使って分析し、サークルアンケートデータで補強できるか、反証できないかと裏付けを進める方法を取って注意深く確認をしてきました。参加サークルが増えていくなか大規模サークルでの頒布のばらつきが読み取れる結果となりました(標準偏差が高くなる傾向がある)。

また会場環境も大きく違い、3Fのほうが天井高が1.0m程度高く、それぞれの通路幅も2Fより1.0m以上広い4.0mを超えるかたちでゆったりと過ごせた一方、通路が3本に増えており、柱が大きく見通しが悪いなど会場に人が少なかった印象を受けたかもしれません。入場規制期待より頒布が伸びなかったと感じたとき、会場環境の違いに原因があったと考えるストーリーはマッチしやすいです。

しかし、ここで紹介したデータ分析は統計値であって、これ自体に意味はありません。我々は「個別のサークルごとに何を感じたか・満足したか」が重要だと考えています。創作活動においてもっとも貴重なリソースは著者のやる気であり、満足度だからです。「たくさん頒布したかったのにできなかった」のであれば期待値形成に失敗した結果ですし「技術書を手にとってもらえてうれしい」「みんなに届けることができてよかった」のであれば良い結果を一緒に喜びたいと考えてます。

ここまで余裕のある空間を使うことは今回の技術書典が初めてでした。一般参加者が動きやすいこともあり、呼び込みや人混みが苦手な人は避けて歩いてしまい近寄ってもらえなかったなどあるかもしれませんし、頒布している内容がわかりにくいとせっかくよい内容でも近寄られなかったという展示のさらなる工夫が必要な可能性もあります。技術書典は一般来場者、出展者いずれも同じ空間を共有し、技術を楽しむ稀有な場所です。今回の課題を糧に出展者と一緒に改善を行い、継続性を重視していきたいです。今後も、技術を得る場・技術的なコミュニケーションの場として可能な限り過ごしやすい場作りを目指していきます。

出展者のみなさんが寄せてくれるアンケートや、ファンミーティングは貴重な意見交換の機会です。あらためてお礼申し上げます。ご協力ありがとうございました。今回も新刊を発行するサークルが95%弱いること、頒布部数が1,000を超えるサークルが複数出ていること、サークル数が増えてばらつきが大きくなってきていること、いずれも高い関心、新しい技術書のかたちとして技術書典の認知が進んだ結果ですが、まだまだ変化が続きます。出展サークルの25%は依然としてはじめての執筆です。毎回、新しい技術書典が生まれてくる姿だと感じて、一緒に執筆の苦労・当日の体験を楽しんでもらえると助かります。

変化を許容し、これまで以上に面白い場となることを願っています。

サークルの体験向上に繋げるアンケート

コミュニケーションについて

1:全然なかった~5:十分あったの5段階評価です。前回と傾向は変わりません。参加者数が1万人を越える状況が続いており、大幅な改善はありませんでした。あいかわらず頒布だけでも大変な状況が伺えます。

展示形態の選択肢(複数回答) 利用率
運営の用意したサークルべんりカード(QRコード)を利用した 83.2%
見本誌による説明を行った 93.3%
実演を行った 12.8%
タブレット、PCなど電子機器を使った 14.1%
ポスターを掲示した 49.5%
おしながきを用意した(頒布物一覧表) 43.8%

多肢選択式です。展示方法は見本誌、実演、タブレットによる展示が一般的でした。展示・頒布にかかる手間ははじめての参加者には難しい場合もあるので運営によるサポートも行っています。

サークル意識調査

「会場での会話・頒布を通じた充実感、楽しさ」「読者からの反響」「収益(売上などで利益が出ること)」「趣味性(自分のやりたいことができていること)」「実益(技術を発信することで知名度が上がる、有名になるなど仕事につながること)」「コミュニティ(友人・知人とのつながりを持てること)」「技術分野での貢献(より多くの人へ技術を届けること)」からの多肢選択式です。

どれか特定の要素に偏ることなく、まんべんなく意義を感じる要素があることが読み取れます。これも前回から変わらない傾向です。
特に多かった項目が「充実感、楽しさ」および「読者からの反響」「趣味性」です。反響の部分は人とのつながりが創作活動において大きな力になることが示されてるといえます。

前回よりも読者の反応などを重視する声が増えています。技術コミュニティでのつながり、発表の場としての期待が伺えます。

次回参加について

97%超!いつもありがとうございます。今回も嬉しい回答結果となりました。反省点もあるので次回も改善の取り組みを通じて、よりよいイベントとなるように運営していきます。

技術書典8 is coming.

技術書典8は11月30日まで出展サークル募集中です!もし、情報を取りこぼしたくないというかたはTwitterをフォローいただくか、
Webサイトよりユーザ登録をしてください。

技術書典6サークル参加アンケート結果と分析

技術書典 代表 @mhidaka です。
技術書典7の開催にあわせて技術書典6のサークル参加アンケートを公開します。

技術書典とは

技術書典とはTechBooster(mhidakaが代表の技術書をかくサークル)と達人出版会(takahashimが代表の電子技術書出版社)が主催している技術書イベントです。
広く技術のことについて知れるお祭りです。

技術書典6開催情報(振り返り)

第6回 技術書典
日時:2019年4月14日(日曜日)11:00~17:00
場所:池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)
サークル参加:合計463サークル
来場数:10,300人(入場時延べ※)

第6回は池袋サンシャインシティ2F展示ホールDでの2回目の開催でした。前回の技術書典5に引き続き、来場者数10,000人を突破しています。混雑緩和を目的に時限式の有料化を初めて実施しましたが、それでも時間帯によっては行列が発生し、完全に行列が解消されたのは15~16時でした。

参加者数は一般来場者を入口でのカウントとサークル入場者数を合算した10,300人です(入場フリー後の出口からの入場も含まれています)。第5回の参加者は10,340名ですので人数は同数といえそうです。計測方法は数取器、いわゆるカウンターです。今回は混雑対応を優先したため計測担当者が減り、5%~10%程度の取りこぼしがあるかもしれません。これは当日の抽出検証による誤差確認の結果です。

3,000平方メートルでのオペレーションは2回目ですが列整理、構内配置、目印の設置など改善を目的とした施策を行って動線確保&混雑緩和に努めました。当日は各種メディア取材も入りイベントとしての定着を感じています。なお出展参加の倍率は約1.5倍で大変に高い水準です。注目を集めたにもかかわらず事故なく終えられたことは出展参加者、一般参加者をはじめみなさまのおかげです。

ウェブ上には参加者による来場レポートなどがあります。さがしてみてください。以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。あわせてどうぞ。

本の対象範囲

技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?

技術書典はハード、ソフト、機械、科学、エンジニアリングに関わるその他ライフスタイルや考察など技術ジャンルを問わず「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。

アンケート結果

アンケートは241サークルから回答をいただきました(回答率52.1%)。回答いただきました出展者のみなさん、ありがとうございます。

アンケート結果は過去に学び、未来を掴み取る統計情報として毎回まとめているものです。
次回開催の参考に使うことを想定していますが確固とした指標ではありません。各項目は必須ではない&多値回答可能ですので合計値が241になるわけでもありません。
質問の文言など見切れ対応、その他および自由回答を画像から削除するなどグラフは適宜加工しています。

参加サークル調査

執筆経験について

執筆活動について尋ねました。「執筆は初めて」「コミケなど他のイベントに参加したことがある」「技術書典から執筆を開始した」「商業でも活動している」「その他」からの多肢選択式です。その他については割愛しています。

今回は初めての人が約27%です。前回のアンケートでは43%でした。割合の減少は出展参加の倍率が上がったことが影響していると想像しています。一番下グラフタイトルが見切れていますが「商業誌への寄稿、著書があり」プロとして活躍されている方は18.4%です。

第6回での「技術書典から執筆を開始した」回答は前回の35.8%から大きく伸びて55.6%です。はじめて過半数を超えました。発表の場としての定着、コミュニケーションの場として認知されることを目指していきたいです。

技術書典でははじめての人向けのサポートを充実していきたいと考えており、初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。

https://techbookfest.connpass.com/ メンバーになると勉強会の開催時に通知が届きます。技術書典ならではの工夫、編集や出版のサポートを目的とした場所です。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。

持込部数

当日、持ち込んだ数はサークル単位では平均291部です。新しく書き下ろした新刊と過去の技術書典で配布した実績のある既刊に分離して計算しているので内訳も掲載しておきます。この内訳は1品種ごとの統計値で、サークル単位の平均ではない点に気をつけてください。

  • 新刊1品種あたり:平均155部、最頻値 100部、中央値100部
  • 既刊1品種あたり:平均 60部、最頻値 30部、中央値 30部

新刊に関しては第5回に比べて平均値が20%増加しています。増加傾向が続いており第4回と比べると実に1.5倍に成長しています。最頻値、中央値はともに100部です。既刊は品種数が少ないこともあり平均60部、最頻値および中央値はどちらも30部です。

新刊頒布
既刊頒布

持ち込み傾向をみるとこれまで通り95%超のサークルが新刊を用意しています。
既刊は46%です。大幅に減った前回の32%から復調し、第4回アンケート相当の水準に戻りました。

  • 新刊:ほぼすべてのサークルで用意。平均1.4タイトル(1サークルあたり)
  • 既刊:4割強のサークルで用意。平均タイトル数は割愛(サンプル偏りにつき)

なお既刊では1〜2品種持ち込む場合の部数は大きめです(既刊があるサークル参加者のうち75%が該当)。
この場合は100部、50部という単位ですが3品種以上を持ち込む場合(25%が該当)では最頻値または中央値を下回る傾向にあります。タイトル数が多い場合、そもそも持ち込み数も減っていることが伺えます。出展者の頒布方針が色濃く出るパラメータかもしれません。

新刊については次のとおりです。

頒布傾向

アンケート結果を勘案すると平均的なサークル像は200〜300冊を持ち込み、新刊1タイトルあたり150部が目処です。サークルは1.4タイトルの新刊を用意しています(2タイトルを用意した時点で持込部数の合計が300部になる)。

既刊の持ち込み比率は10対4です。おおよそ4割強のサークルで既刊を扱っています。たとえば新刊を1タイトル150部、既刊を1タイトル100部用意していれば持込部数は合計250部です。

技術書典6でも「新刊を落とした」という状況が大変少なかったことを示すとともに、1サークルあたり新刊だけで1.4タイトルという複数の技術書が生み出され、持込部数が伸びている状況があります。

この状況は会場が広くなったことで来場者が増え、興味のある書籍を探す良いループに入っていると考えてよいかもしれません。依然としてサークル申込数・倍率は高水準を維持しています。タイトル数が多めにでた数字はこのあたりの事情で合同サークルの誕生が影響しているでしょう。

サークルと持込部数、頒布価格の関係

前述の結果を踏まえてアンケート回答者のうちサークル調査「執筆は初めて」群(全体の27%、初参加)と「過去に執筆経験がある」(同57%、2回以上)に分けた場合の持込部数は次のとおりです。

  • 初参加 サークルあたり持込平均:200部
  • 2回以上 サークルあたり持込平均:310部

これらは新刊・既刊の品種が合算されている点に注意してください(またアンケートは自由回答なので合算しても結果が一致しません)。結果からは部数の決定にあたって出展者の参加歴がもっとも大きなファクターであることが読み取れます(第5回アンケートと同じ回答傾向です)。

特筆すべきは持込部数の伸びであり、これは前回比で20%以上の成長があります。相対的には初参加のサークルは持込数を少なく、2回目以降は増える傾向ですが在庫リスクを回避しつつも完売した際の機会損失リスクを減らし、また来場者数の増加に合わせて多くの部数を持ち込んでいます。

価格帯については無料や数百円のものから2,000円を超えるものまで幅広くあります。頒布データを見る限り、価格と売り切れの相関は強くありません。詳しい分析は技術書典5の「かんたん後払い」統計情報の解説記事が参考になります。

なお頒布傾向に1,000円でXXページ必要といった内容は導出できていません。直感的には会場で見かけた面白そうな本が次も残っていることは考えにくいため「良いと感じたらすぐに買う」という行動は理にかなった戦略であり、一般参加者に響いて「面白いな」「これなら読みたいな」と感じたら価格をほとんど気にせず購入しているはずです。

頒布部数と完売率

当日の頒布部数はサークル平均187部、完売率は59.4%です。これは前回比で8.4ポイントの増加です。

アンケート結果

59.4%という結果は単純に来場者の購入数が増えたことが理由に挙げられます。サークル数、来場者数に前回から大きな変化がないためです。これはイベントが認知されているまたは供給不足であったところに持込部数が増加し、需要を満たした側面が強いと推察しています。6割弱の品種がなくなっており、紙の書籍に絞ると64%が一般参加者へ届けられています(電子書籍のカードなどを除いた紙の持込部数と頒布数の比率)。

本項目は一般参加者の高い購買意欲を示しており、出展者や持ち込み部数の増加を十分に吸収できる需要がある可能性が高いでしょう。

早いサークルで12時までに完売(全体の14%)、13時にかけて全体の32%が、15時までに50%弱のサークルで新刊、または既刊いずれかの品種が完売になっています。

頒布部数のトレンド

当日は開場直後(1時間以内)に新刊が売り切れたサークルが4%程度です。完売までの分布傾向に変化はありませんが全体的に前倒しされていると感じます。

頒布情報

アンケート結果と回答率から当日の全サークルの持込部数は205,000冊、完売率59.4%(品種ベース)、
参加者一人あたり10.8冊、合計111,000冊の技術書が1日で流通したと推測できます。

持込部数はほぼ倍増、実際に頒布があった技術書の部数も1.5倍の伸びとなりました。どこまでいくのか想像が追いつかない状況です。特筆すべきは参加者一人あたりの購入数です。10.8冊は前回比で3.3冊の増加、第4回から比べると4.6冊の上昇です。

技術書典6では混雑時でもお目当ての書籍を手に入れてもらおうと様々な取り組みをしています。配置位置を掲げた「配置のぼり」やサークルカットを掲載した「サークルべんりカード」など統一テンプレート化による発見容易性、わかりやすさへの取り組みが貢献しつつあると考えています。

かんたん後払いの利用率も高くなっており、運営としてもサークル配置場所への到達や購入への障壁を下げていくことで(場をオーガナイズすることで)面白い技術との出会いを推進できれば大変うれしく思います。

今回から電子書籍と紙を分離して集計(前回までは合算)していますが、紙だけをみても持込部数は135,000冊、流通は87,000冊です。単独でみても過去最高の数字を示しています。

紙と電子の流通比率は概ね78:22です。2割強が電子データ(PDF)で提供されているのは興味深い数字(一般的な紙と電子の流通比率より若干多いかなぐらいの数字)です。運営でも電子データの利用にまつわる問題を解決するため機能開発を続けています。

主宰雑感

会場を変えて広々と開催するはずだった技術書典ですが、記録的な数字を引き続き伸ばしています。
技術を得る場・技術的なコミュニケーションの場として機能していくことに期待が持てる結果となりました。

これらの数値はアンケートをベースにした統計情報であり、この先の需要が落ち着くのか更に伸びるのか推移を予測することは困難です。可能な限り過ごしやすい場作りを目指していきます。

技術書典に関する体験・頒布に関する統計情報を公開することがサークル参加のための資料・頒布数決定の判断材料に活用できると考えています。アンケートへの協力ありがとうございました。

6回の開催を経て技術書典では6~7割のサークルが「技術書典から執筆を開始した」層にあたります。
情報を発信できる場として、新しい技術に出会えるお祭りとして受け入れていただき、また一緒に技術書典を盛り上げてくださっていると感じており、大変うれしいです。皆様のご協力、誠にありがとうございます。技術書典は、いろんな技術の普及を手伝いたいとの想いではじまりました。これからもそうあり続けたいです。

技術書典6ではサークル申し込み数も過去最高を記録しています。当選倍率も高水準で推移しているため、解消すべく技術書典7では新しいチャレンジがあります。

主宰としても毎回が新しいイベントと思えるほどの違いです。気を抜かず安全に良い体験ができるよう最大限の努力し、運営しています。「かんたん後払いのダウンロード対応」「サークルべんりカード」「配置のぼり」「見本誌提出袋」など試行錯誤をしていきますし、本稿のように結果を公開して参加者へ還元する予定です。

新刊を発行するサークルが95%を超えていること、頒布部数が1,000を超えるサークルが複数出ていること、持込部数が平均の2倍となる600部を越える中規模サークルが増加していること、いずれも高い関心、新しい技術書のかたちとして技術書典の認知が進んだ結果ですが、まだまだ変化は続きます。今しばらくこの変化にお付き合いいただき、できれば毎回、新しい技術書典が生まれてくる姿を楽しんでもらえると助かります。

変化を許容し、これまで以上に面白い場となることを願っています。

サークルの体験向上に繋げるアンケート

コミュニケーションについて

1:全然なかった~5:十分あったの5段階評価です。

前回と傾向は変わりません。参加者数が1万人を越える状況が続いており、大幅な改善はありませんでした。あいかわらず頒布だけでも大変な状況が伺えます。

展示について

「見本誌による説明」「実演を行った」「タブレット、PCによる展示」「ポスターの掲示」「お品書き」「運営が用意したサークルべんりカードの利用」「その他」からの多肢選択式です。展示方法は見本誌、実演、タブレットによる展示が一般的でした。
展示・頒布にかかる手間ははじめての参加者には難しい場合もあるので運営によるサポートも行っています。

サークル意識調査

「会場での会話・頒布を通じた充実感、楽しさ」「読者からの反響」「収益(売上などで利益が出ること)」「趣味性(自分のやりたいことができていること)」「実益(技術を発信することで知名度が上がる、有名になるなど仕事につながること)」「コミュニティ(友人・知人とのつながりを持てること)」「技術分野での貢献(より多くの人へ技術を届けること)からの多肢選択式です。

どれか特定の要素に偏ることなく、まんべんなく意義を感じる要素があることが読み取れます。
特に多かった項目が「充実感、楽しさ」および「趣味性」の2つです。さらに「読者からの反響」「技術分野での貢献」と続いています。番外となりますが記述回答も大変多く、思い思いの楽しみ方をしていただいてます。

前回よりも趣味性やコミュニティ、読者の反応などを重視する声が増えています。技術コミュニティでのつながり、発表の場としての期待が伺えます。

次回参加について

99%超!いつもありがとうございます。今回も嬉しい回答結果となりました。次回も新しい取り組みを通じて、よりよいイベントとなるように改善を続けていきます。

技術書典7 is coming.

技術書典7は近日中に開催についてアナウンスできそうです!もし、情報を取りこぼしたくないというかたはTwitterをフォローいただくか、
ホームページよりユーザ登録をしてください。

技術書典5をデータで振り返る

こんにちは@shuhei_fujiwaraです。
今回は技術書典のデータの話をしましょう。

かんたん後払いとアンケートのデータ分析

技術書典ではQRコードを読み込んで本を購入し、後でまとめて支払うかんたん後払い」という技術書典独自のシステムがあります。「誰がどの本を買ったか」という情報は現金を手渡ししていたときは知る手段がありませんでしたが、かんたん後払いを導入したことで部分的にデータが得られるようになりました。

かんたん後払いとサークル出展アンケートの結果をもとに、出展者の皆さんがおそらく気になるであろう「どんな本がよく売れるのか?」「サークルチェックした人がどれくらい買いに来るのか」といった頒布傾向の調査結果を紹介します。
精一杯、正確になるように注意して分析しましたが解釈が難しいデータも多く、完全な指標を示しているとはいえません。しかしデータで可能な限り客観的に振りかえることは多くの気付きが得られます。率直な考察もまじえて伝えていければと思います。

多くの人に手にとってもらえるのはどんな本?

当たり前ですが、より多くの人に自身の本を手にとってもらえるかは重要な関心ごとです。技術書を自分で出版するわけですから書きたい内容を思う存分書くことが一番大事ですが、手にとってもらうためという視点では、内容を良くする以外にもできる下準備がたくさんあるのです。

頒布物情報の登録はとても大事

技術書典では事前に頒布物情報を登録できます。

技術書典5での頒布物の紹介画面例

このように頒布物を登録することで、一般来場者は欲しい本であるかという事前のサークル確認ができます。

そして、この情報は次の図のように頒布部数と強い相関があります。

コンテンツ説明文の文字数と頒布の相関

頒布物情報の文字数を「0~99」「100~199」「200~399」「400~」と4つに分類しています。左図は文字数と頒布点数(頒布している品種の数)をグラフ化しています。説明文が短い書籍が多く長くなるにつれて頒布点数が単純減少しています。かわって右図は、文字数と実際の頒布部数をグラフで表しています。説明文をきっちり書いているほど頒布部数が伸びるというわかりやすい結果が得られています。

頒布物情報は画像も登録可能です。文字数とおなじく比例関係にあるか調査しました。

画像登録数と頒布の関係

画像に関しては左図では登録画像が1枚(つまり表紙のみ)というケースがもっとも多かったです。しかし右図で頒布傾向をみてみると基本的には登録画像が多い方が頒布部数が伸びています。意外なことにグラフからは画像が4枚以上になると頒布部数の減少を読み取れます。簡潔に内容を伝えるということも大事なのかもしれません。

ここで説明した分析データは因果関係まで明らかにしたものではありません。じつは因果が逆で「頒布物情報を丁寧に書くとたくさん頒布できる」ではなく「たくさん頒布する本を書く人は頒布物情報を丁寧に書く傾向がある」が真実である可能性はあります。

それでも事前に頒布物情報が来場者に正しく伝わることにデメリットはありません。間違いなく伝えたい技術を伝えるという側面ではプラスに働きます。ぜひ頒布物情報は丁寧に書いてみてください。

頒布価格とページ数

技術書典での頒布傾向を考えたとき価格とページ数の関連性は、これまで不明でした。
たくさんの人に読んでもらいたいと思ったときは価格を低く設定した方が良いのでしょうか?またページ数が多いほど頒布部数が伸びるのでしょうか?これも皆さん気になるところかと思います。

はじめに価格の影響度をみてみます。次の図は書籍の価格帯と頒布点数、書籍の価格帯と頒布部数の平均の2つをグラフ化したものです。

価格と頒布の関係

左図では「500~999円」のレンジの書籍が飛び抜けて多いとわかります。続く「1000~1499円」と「0~499円」のレンジはかなり僅差です。右図では価格が頒布部数(レンジごとの平均)にどの程度影響があるか確認できます。「0~499円」はおそらく無料配布が相当数含まれており、それ以外のレンジでの頒布部数は500〜1999円と広い範囲でそれほど差は見られません。技術書典に来る人は基本的にお財布の紐が緩くなっているので、このあたりの価格の差はそれほど気にしないのかもしれません。2000円以上になるとさすがに頒布部数に影響があるので、この価格帯で出すなら気合を入れて作る必要がありそうですね。

次の図はページ数と頒布部数の関係についてです。

ページ数と頒布の関係

図ではページ数を「0~29」「30~59」「60~99」「100~149」「150~」の5つに分類してレンジごとの頒布点数を積み上げています。左図のグラフをみるかぎり100ページ以上の書籍は少なくなるようです。技術書典では100ページ未満の薄い本がメインということですね。右図のグラフからはページ数と頒布部数の目立った傾向が読み取れません。ページ数はほとんど関係がなさそうです。

サークル配置と頒布

サークル配置は頒布部数に影響を与えるのでしょうか?場所に差があるのかもみてみました。

配置区分と頒布の関係

こちらのグラフは「あ」~「こ」および「ス」での頒布部数の平均(頒布点数の差が影響しないよう1サークル単位で正規化を実施しています)を表示しています。混雑対応が行われた「あ」「S(ス、企業協賛ブース)」は突出していますが、それ以外はそれほど差はありませんでした。
気になってジャンルなどでもデータを確認してみましたが(こちらはニッチなジャンルほど頒布部数が伸びる傾向にありました)特別影響があった様子は見つけられませんでした。これは自動配置による配置最適化の成果もあるかもしれませんが、技術書典では多種多様なサークルが受け入れられているといって良さそうです。

サークルチェックの裏では何が起こっているのか

開催が近づくと、サークルチェック数を見ながら何部用意するべきか頭を抱えるという共通の課題が技術書典にあります。
サークルチェックで登録した人のうち、実際にどれくらいの割合の一般参加者がブースへ足を運んで「これください!」といってくれるのか、気になるところです。
印刷部数の決定は毎回のこととはいえ深刻な問題ですね。

先に結論を書いてしまいましょう。サークル参加アンケートの結果と合わせて分析することで(多少乱暴な数値になりますがわかりやすさを優先して書くと)次の傾向を確認しています。サークルの頒布部数について平均的には…

  • 最終的なサークルチェック数に対して係数1.0~1.2をかけると平均的な頒布部数となる(ただしブレが激しい)
  • 頒布部数のうち約3割がサークルチェックしてくれた人である
  • のこりの7割は偶然手にとってくれた人である可能性が高い

正直なところ解釈が難しい結果となりました。最終的なサークルチェック数は当日に確定するため印刷部数の判断にはあまり意味をなさない指標ですし、偶然見つけるという運の要素に総数の7割が引っ張られるためサークルチェック数と実際の頒布部数はかなりブレやすいです。どちらにせよ注意が必要という身も蓋もない結論だからです。

この結論にたどり着くまでをダイジェストで紹介します。次の図をみるとサークルチェックと頒布部数には明らかな相関があることがわかります。

サークルチェック数と頒布の相関

左図は「サークルチェックの数ごとの頒布点数」のグラフ、右図は頒布部数(各レンジの平均)を積み上げたものですが、確かにサークルチェックと頒布部数は比例しているようです。
このようなカウントデータは平均が大きくなると分散も大きくなるため多めの部数を予定している人は、ブレに注意しておくといいでしょう。

この段階で私の中にはさらなる疑問が生まれました。「サークルチェックは前日の夜にかけて急激に伸びることを考えると、そもそもチェックした人がちゃんと買いに来ているのか?」という点です。

サークルチェックはどれくらい頒布に繋がるのか

頒布状況については現金に関するデータは得られていないことは前述のとおりです。運営事務局では、かんたん後払いのデータしか分析できないため、次の2つにケースを絞って調査する必要がありました。

  • 一般参加者がかんたん後払い利用者である(少なくとも1回は利用している)
  • 出展者のサークルでかんたん後払いに対応している

この2つが前提条件です。これらに絞ってサークルチェックの利用動向を調べたところ(涙がでるぐらい大変な試行錯誤があったのですが割愛して結果だけお伝えしています)「全ユーザーのサークルチェック総数のうち約3割が頒布に繋がっている」という結果を得ました。これは、前提条件としたかんたん後払いのデータとサークル参加アンケート結果の統計情報から導出した結果です。サークルチェックしてくれたひとの約3割が頒布に繋がっていると予想されます。

サークルチェックせずに買う人がどれくらいいるのか

先ほどは「サークルチェックの3割が頒布に繋がる」という結果でしたが、サークルチェック数の3割の部数を持ち込めば足りるわけではありません。
実際には75000部が頒布されており、こちらの統計値をベースとした場合、次の内訳であると推測できました。

流通の内訳を推定

サークルチェックをせずに購入する人がかなりの数(おおよそ7割)存在していることがわかります。サークルチェックは、その本がどうしても欲しいひと、探している人へ届ける良い方法ですが、今現在は偶然の出会いを生み出していません。会場という場所を共有することで化学反応がおきて数多くの頒布へつながっているのです。

一方で機会損失については次のように考えることもできます。サークル参加アンケート結果では全体の51%の品種で完売を示唆しています。欲しくても手に入らなかったケースを考慮すると、在庫が十分であれば頒布部数が伸びる可能性があります。

結局どれくらいの部数を持ち込めば良いの?

サークルチェック数を参考に持ち込み部数を決めるときは、次のような平均像を念頭に置いてください。

  • サークルごとの平均でもチェック数よりちょっと多いくらいの頒布部数が見込める
    • 技術書典5全体では、サークルチェック総数56000に対して頒布部数の総数は75000冊
  • サークルチェックだけに基づいた頒布部数予測はブレやすい
    • サークルチェック機能を使わずに来場し、書籍を手に取る人の割合はかなり大きい

身も蓋もない結論ですが実際の頒布部数は、かなりブレやすいのでどの程度のブレを許容できるかが肝要です。サークルチェック数だけではなくて色んな指標を使ってください。
とくに自分が納得感をもって当日を迎えられるかは大事な要素です。部数決めは自分との戦いでもあります。

おわりに

  • 頒布物情報はとても大切なので丁寧に書いてみてください。全然違いますよ
  • 価格設定やページ数については、それほど細かいことを気にしなくても大丈夫です
  • 当日はサークルチェックしていなくても思いがけず購入する人がかなりいます。周りに迷惑にならないよう全力で楽しみましょう
  • かんたん後払いを使うと貴重なデータが蓄積されて技術書典も改善されていくので、どんどん使ってください!

技術書典5サークル参加アンケート結果と分析

技術書典 代表 @mhidaka です。
技術書典6の開催にあわせて技術書典5のサークル参加アンケートを公開します。

技術書典とは

技術書典とはTechBooster(mhidakaが代表の技術書をかくサークル)と達人出版会(takahashimが代表の電子技術書出版社)が主宰している技術書イベントです。
広く技術のことについて知れるお祭りです。

技術書典6は2019年4月14日(日曜日)開催、技術書典5と同じく池袋サンシャインシティ2F展示ホールD(文化会館2F)です。
本エントリを読んで興味がでたらぜひお立ち寄りください。

技術書典5開催情報(振り返り)

第5回 技術書典
日時:2018年10月8日(祝・月)11:00~17:00
場所:池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)
サークル参加:合計470サークル
来場数:10,340人(入場時延べ)

第5回は池袋サンシャインシティ2F展示ホールDでの初開催でした。たいへんな盛り上がりで技術書典としてはじめての来場者数10,000人を突破しました。
事故なく盛況だったことは出展参加者、一般参加者をはじめみなさまのおかげです。

運営としては、これまでの3倍の面積3,000平方メートルでの初オペレーションです。万全の準備で挑みましたが
当日は数時間にわたって入場待ちの行列が発生し、各種メディアの取材が行われるなど予想を超えた人気ぶりでした。

会場では技術書典3で好評だった見本誌会場が復活するなど大きな会場を活かした構成を採りました。
参加者数は一般来場者を入口でのカウントとサークル入場者数を合算した10,340人です。
この人数は、入場フリーとなった以降の再入場を分離していません(延べ人数です)。

第4回の参加者は6,300名でしたので一気に150%の規模に達しています。サークル数も200サークル程度が増加しています(ほぼ倍増)。
ウェブ上には参加者による来場レポートなどがあります。さがしてみてください。

以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。あわせてどうぞ。

本の対象範囲

技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?

技術書典はハード、ソフト、機械、科学、エンジニアリングに関わるその他ライフスタイルや考察など技術ジャンルを問わず
「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。

アンケート結果

アンケートは151サークルから回答をいただきました(回答率32.1%)。回答いただきました出展者のみなさん、ありがとうございます。

アンケート結果は過去に学び、未来を掴み取る統計情報として毎回まとめているものです。
次回開催の参考に使うことを想定していますが確固とした指標ではありません。各項目は必須ではない&多値回答可能ですので合計値が151になるわけでもありません。
質問の文言など見切れ対応、その他および自由回答を画像から削除するなどグラフは適宜加工しています。

参加サークル調査

執筆経験について

執筆活動について尋ねました。「執筆は初めて」「コミケなど他のイベントに参加したことがある」「技術書典から執筆を開始した」「商業でも活動している」「その他」からの多肢選択式です。その他については割愛しています。

今回は初めての人が約43%です。前回のアンケートでは25%でしたので割合としては増加しています。会場が大きくなったことが寄与していると
考えています。商業誌への寄稿、著書がありプロとして活躍されている方は18.5%、
「技術書典から執筆を開始した」との回答は35.8%です。

技術書典が発表の場として定着してきたこと、コミュニケーションの場として認知され始めてきていることが背景にありそうです。

技術書典でははじめての人向けのサポートを充実していきたいと考えており、
初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。

https://techbookfest.connpass.com/ メンバーになると勉強会の開催時に通知が届きます。
技術書典ならではの工夫、編集や出版のサポートを目的とした場所です。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。

持込部数

当日、持ち込んだ数はサークル単位では平均226部です。
新しく書き下ろした新刊と過去の技術書典で配布した実績のある既刊に分離して計算しているので内訳も掲載しておきます。

  • 新刊:平均120部、最頻値 100部、中央値100部
  • 既刊:平均 60部、最頻値 20部、中央値 40部

新刊に関しては平均値が20%増加、最頻値が100部に増加しました(第4回では最頻値は60部でした)。
既刊はやや趣がことなって最頻値が20部に減少して平均値、中央値の2つは、ともに増加しています。

新刊頒布
既刊頒布

持ち込み傾向をみるとこれまで通り95%超のサークルが新刊を用意しています。
既刊については大幅に減っており32%です。第4回のアンケートは50%弱を記録していました。

  • 新刊:ほぼすべてのサークルで用意。平均 1.4タイトル(1サークルあたり)
  • 既刊:3割のサークルで用意。平均はサンプル数減少伴い割愛

なお新刊については比較的、読み取りやすい数字がでていますが既刊は、今回から急激にサンプル数が減少しているため
踏み込んだ分析が行えていません。しかしながら次の傾向があることがわかっています。

既刊を1または2種持ち込む場合(既刊があるサークル参加者のうち60%が該当)に部数は大きめとなり、平均値を超えています。
4種以上を持ち込む場合(25%が該当)では最頻値または中央値に近づく傾向にあります。
これらの差はサークル参加している出展者の頒布方針が反映されていると判断しています。

新刊については次のとおりです。

頒布傾向

平均的なサークル像はこれらを組み合わせた数字としてざっくり100~200冊を持ち込み、
新刊1種120部を目処に新刊と既刊の持ち込み比率は10対3です。おおよそ3割のサークルで既刊を扱っています。
この数字は「新刊を落とした」という状況が大変少なかったことを示すとともに、
1サークルあたり新刊だけで1.4タイトルという複数の技術書が生み出されてる状況をあらわしています。

今回の技術書典5は会場が広くなったにもかかわらず、サークル申込は高水準を維持しています。
タイトル数が多めにでた数字はこのあたりの事情で合同サークルの誕生が影響していると推測しています。

サークルと持込部数、頒布価格の関係

前述の結果を踏まえてアンケート回答者のうちサークル調査「執筆は初めて」群(全体の43%、初参加)と「過去に執筆経験がある」(同57%、2回以上)
に分けてサークル単位での持込部数を確認してみたところ次のような差が生まれました。

  • 初参加 持込平均:172部、1.1タイトル
  • 2回以上 持込平均:270部、1.6タイトル

これらはサークル単位の分析であるため、新刊・既刊の数字が合算されている点に注意してください(またアンケートは自由回答なので合算しても結果が一致
しません)。また全サークルの平均持込数が226部であることは前述のとおりです。

結果からは部数の決定にあたって出展者の参加歴がもっとも大きなファクターと想像しています。
初参加のサークルは持ち込み数を相対的に少なくし、在庫リスクを回避しています。
2回以上参加している出展者は完売した際の機会損失リスクを減らすために多めに持ち込む傾向が強くでています。
いずれにせよ数字の大小ではなく、相対的な差を表している数字と捉えるべきでしょう(第4回に比べて持ち込み部数そのものは増加傾向)。

価格帯については無料や数百円のものから2000円を超えるものまで幅広くありました。
今回、頒布データを見る限りは価格と売り切れの相関は強くありません。1000円でXXページ必要といった内容は導出できませんでした。
一般参加者に響いて「面白いな」「これなら読みたいな」と感じたら価格をほとんど気にせず購入しているためと考えています。

直感的にも「会場で見かけた面白そうな本が次も残っていることは考えにくいため良いと感じたらすぐに買う」という行動は、
理にかなった戦略ではあります。私もそう行動する可能性が高いです。

なお頒布の詳細や価格帯の詳しい分析は「かんたん後払い」統計情報の解説記事をお待ち下さい(鋭意準備中です)。

頒布部数と完売率

当日の頒布部数はサークル平均157部、完売率は51.0%です。これは前回比で6.5%の減少および21ポイントの減少です。

アンケート結果

紙の頒布終了に伴い、電子書籍による頒布を継続との回答が4.0%ありますがこちらはグラフからは除外しています。
51.0%という結果は参加サークル数も影響しているほか、技術書典へ2回以上参加しているサークル出展者は多くの部数を持ち込んでいる現状があります。
このことが完売率の低下に寄与しているといえますが会場の頒布物のうち51%の品種が無くなる結果は、やはり驚くべき状況です。

早いサークルで12時までに完売(全体の10%)、13時にかけて15%が、15時までに40%のサークルで新刊、または既刊いずれかの品種が完売になっています。

頒布部数のトレンド

当日は開場直後(1時間以内)に新刊が売り切れたサークルが5%程度です。
会場が大きくなり、一気にたくさんの一般参加者が入場可能になったことから開始直後の頒布が加速されたことが伺えます。

頒布情報

アンケート結果と回答率から当日の全サークルの持込部数は106,000冊前後、参加者一人あたり7.5冊を購入しており、完売率は51.0%です。
75,000冊の技術書が1日で流通しました。流通量は大幅な伸びを記録した第4回と比べても、さらに1.9倍となる急成長ぶりです。

技術書典5では完売率は21%減少しましたが、参加者一人あたりの購入数は1.3冊上昇しています。
これはアキバ・スクエアを会場としていたときの課題であった混雑(ゆっくり見れていないほどの混雑)が解消した結果と推測しています。
会場の広さを活かし、頒布数は10万冊の大台を超え、うち75%となる7.5万冊が参加者の手に渡りました。
参加者1人あたりの購入数7.5冊は大きな数字ですが統計上、まだ伸び続けています。

会場を変えておちつくかと思っていた技術書典ですが、天候にも恵まれたとはいえ記録的な数字を引き続き伸ばす結果となっています。
あくまでこれらの数値はアンケートをベースにした統計情報であり、この先の需要がおちつくのか、更に伸びるのか推移を予測することは(またしても)困難です。

運営では技術書典に関する体験・頒布に関する統計情報を公開することが
サークル参加のための資料・頒布数決定の判断材料に活用できると考えています。

技術書典5では43%のサークルが「技術書典から執筆を開始した」と回答いただいています。
情報を発信できる場として、また新しい技術に出会えるお祭りとしての技術書典が認知され始めていると思うと大変うれしいです。
皆様のご協力、誠にありがとうございます。技術書典は、いろんな技術の普及を手伝いたいとの想いではじまりました。これからもそうあり続けたいです。

主宰雑感

実は2019年4月開催の技術書典6ではサークル申し込み数も過去最高を記録しています。
当選倍率も高水準で推移しており、もはや3000平方メートルではまったく足りないことは明白です。
このような状況は技術書典7で、苦心はあるものの緩和できると考えていますが、4割にのぼる新規参加のみなさま、リピートして頂いてる6割の参加者のみなさま、
どちらにとってもアンケートをベースとした統計的な数字は参考になるはずです。

新刊を発行するサークルが95%を超えていること、頒布部数が1000をやすやすと超えるサークルが複数出ていること、
いずれも高い関心、新しい技術書のかたちとして技術書典の認知が進んだ結果でしょう。

主宰としても毎回が新しいイベントと思えるほどの違いがあります。気を抜かず安全に良い体験ができるよう最大限の努力し、運営しています。
規模が拡大している現状を鑑み、一部の統計値については初めての参加と2回以上で切り分けて分析を行うように工夫しています。
変化を許容し、これまで以上に面白い場となることを願っています。

サークルの体験向上に繋げるアンケート

コミュニケーションについて

1:全然なかった~5:十分あったの5段階評価です。

話しやすさの面については前回より悪い評価は改善しています。しかし参加者数が10,340名を数えることになるため
大幅な改善はありませんでした。あいかわらず頒布だけでも大変な状況が伺えます。

展示について

「見本誌による説明」「実演を行った」「タブレット、PCによる展示」「ポスターの掲示」「お品書きの用意」「運営が用意したお品書き、QR利用」
「その他」からの多肢選択式です。展示方法は見本誌、実演、タブレットによる展示が一般的でした。
展示・頒布にかかる手間ははじめての参加者には難しい場合もあるので運営によるサポートも行っています。

サークル意識調査

「会場での会話・頒布を通じた充実感、楽しさ」「読者からの反響」「収益(売上などで利益が出ること)」
「趣味性(自分のやりたいことができていること)」「実益(技術を発信することで知名度が上がる、有名になるなど仕事につながること)」
「コミュニティ(友人・知人とのつながりを持てること)」「技術分野での貢献(より多くの人へ技術を届けること)
からの多肢選択式です。

どれか特定の要素に偏ることなく、まんべんなく意義を感じる要素があることが読み取れます。
特に多かった項目が「充実感、楽しさ」および「趣味性」の2つです。さらに「読者からの反響」「技術分野での貢献」と続いています。

次回参加について

いつもありがとうございます。今回も望外の良い回答となりました。次回も新しい取り組みを通じて、よりよいイベントとなるように改善を続けていきます。

技術書典6 is coming.

技術書典6は2019年4月14日に池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)で開催します。
本エントリーを読んで興味を持ったかたは気が向いたら必ずきてください。あと晴れるように一緒に祈ってくれると嬉しいです。

来場者数は10,000~15,000名を想定してスタッフ一同頑張ってます。

技術書典4サークル参加アンケート結果と分析

技術書典 代表 @mhidaka です。
技術書典5のサークル参加申込受付にあわせて技術書典4のサークル参加アンケートを公開します。

技術書典とは

技術書典とはTechBooster(mhidakaが代表の技術書をかくサークル)と達人出版会(takahashimが代表の電子技術書出版社)が主宰している技術書イベントです。
広く技術のことについて知れるお祭りです。

技術書典5は2018年10月8日(祝・月曜日)開催、技術書典4と変わって池袋サンシャインシティ2F展示ホールD(文化会館2F)です。
7月19日 23:59までサークル参加受付中です。
本エントリを読んで興味がでたらぜひ申込ください。

技術書典4開催情報(振り返り)

第4回 技術書典
日時:2018年4月22日(日)11:00~17:00
場所:秋葉原 UDXホール
サークル参加:合計246サークル
来場数:6,380人(整理券配布枚数による)

第4回は快晴での開催となりました。たいへんな盛り上がりでしたが、みなさまの協力のおかげもあり事故なく開催できました。
運営としては技術季報が早々に売り切れる、整理券の在庫が枯渇したためその場で生産するなど想定外のできごともありました。当日の様子は次がわかりやすいです。

今回は会場の都合もあり、技術書典3で好評だった見本誌会場などの準備がない中での開催です。

参加者数は整理券配布枚数およびサークル入場者数を合算した6,380人です。
この人数は整理券をもらったが来場しなかった人や繰り返しの入場(のべ人数)を考慮していません。

5000枚の整理券を用意していましたが一般来場者数が想定を大幅に上回り、混雑対応を優先したため
入場者数とユニークユーザーの把握が困難となりました。
なお第3回開催がのべ3,100人(ユニークユーザーで2,750人)でしたので概ね2倍の参加者数です。

第3回まで参加者が約3,000〜程度で安定していましたが第4回開催では会場設備改善によりサークル数で25%増加、
一般参加者数で100%増、開催直後から16時前までの5時間弱にわたり入場制限が発生するなど記録的なイベントとなりました。
当日来場いただいた一般参加者のみなさん、当日サークル参加いただいた出展者のみなさん、ありがとうございました。

ウェブ上には参加レポートなどがあります。さがしてみてください。

以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。あわせてどうぞ。

本の対象範囲

技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?

技術書典はハード、ソフト、機械、科学、エンジニアリングに関わるその他ライフスタイルや考察など技術ジャンルを問わず
「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。

アンケート結果

アンケートは131サークルから回答をいただきました(回答率53.2%)。回答いただきました出展者のみなさん、ありがとうございます。

アンケート結果は過去に学び未来を掴み取る統計情報として毎回まとめているものです。
次回開催の参考に使うことを想定していますが確固とした指標ではありません。各項目は必須ではない&多値回答可能ですので合計値が131になるわけでもありません。

参加サークル調査

執筆経験について

執筆活動について尋ねました。「執筆は初めて」「コミケなど他のイベントに参加したことがある」「技術書典から執筆を開始した」「商業でも活動している」「その他」からの多肢選択式です。

今回は初めての人が約22%です。前回のアンケートでは25%でしたので割合としては微減、全体としては増加傾向です。
商業誌への寄稿、著書がありプロとして活躍されている方は20%、今回より追加した選択肢「技術書典から執筆を開始した」との回答は37%です。
前回は自由記述で13%でしたので直接的な比較はできませんが、着実に増えておりイベントが定着してきたことが伺えます。

技術書典でははじめての人向けのサポートを充実していきたいと考えており、
初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。

https://techbookfest.connpass.com/ メンバーになると勉強会の開催時に通知が届きます。
プロの編集さんや出版社さんからゲストをお招きしています。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。

持込部数

当日、持ち込んだ数はサークル単位では平均208部が持ち込まれています。

前回から新刊と既刊に分離して計算しているのでこちらも掲載しておきます。
ここでの新刊は技術書典にはじめて出した本という定義です。100%今回はじめて書き下ろした技術書ではないので注意してください。

  • 新刊:平均100部、最頻値 60部、中央値100部
  • 既刊:平均 45部、最頻値 30部、中央値 20部

今回のアンケートから品種(持ち込んだ種類)を取得するようにしたため全体的に減少傾向があります。
新刊1種あたりの中央値は100部です。
これはいままで合算していたものを細かく入力いただいたためで、より現状に即した数字です。

新刊頒布
既刊頒布

品種については次の平均値を得ています(品種を加味すると前回のアンケート結果相当を1.5倍程度上回ります)。

  • 新刊:サークルの95.4%が頒布、平均 1.6タイトル(1サークルあたり)
  • 既刊:サークルの45.6%が頒布、平均 2.2タイトル(1サークルあたり)

平均値が大きめに見えますが実際には次のような頒布傾向です(こちらのほうが実態を表しています)。

頒布傾向

平均的なサークル像はこれらを組み合わせた数字としてざっくり200冊を持ち込み、
新刊1種100部を目処に新刊と既刊の持ち込み比率は10対5です。おおよそ5割のサークルで既刊を扱っています。
この数字は「新刊を落とした」という状況が大変少なかったことを示すとともに、
1サークルあたり複数の技術書が生み出されてる状況をあらわしています。

今回の技術書典5は会場の都合上、サークル申込が高倍率になっています。
新刊種類が多めにでた数字はこのあたりの事情で委託・合同サークルの誕生が影響していると推測しています。

前回に引き続き、価格帯はアンケートを取っていません。会場を目測したかぎりでは500~1000円といったところです。
無料や数百円のものから2000円を超えるものまで幅広くありました。TechBoosterは1冊1000円ですが、価格と売り切れの相関は強くありません。
聞いた範囲では一般参加者は純粋に面白いと感じた本を買っているようです。

頒布部数と完売率

当日の頒布部数はサークル平均168部、完売率は78.3%です。前回比で14ポイントの増加です。

アンケート結果

この数字は技術書典2(UDXアキバスクエア初開催)と同程度の水準です。
頒布部数が伸びた背景には来場者数が100%程度増加していたこと、参加サークルが増加していること、持ち込み部数が増加していること、晴天であること
など上振れ要因にめぐまれたことが挙げられるでしょう。ここでも天候に影響されるというイベントの特性があります(今回は技術書典史上最高の晴天でした)。

早いサークルで12時までに完売(全体の15%)、13時にかけてさらに21%が、14時までに追加で20%のサークルで
新刊、または既刊いずれかが完売になっています。

頒布部数のトレンド

当日は開場直後(1時間以内)に新刊が売り切れたサークルが2%程度ありました。
参加者数が増えたことで頒布速度が加速していると読み取れます。
特に14時までの3時間で全体の60%のサークルで頒布物がなくなっており、この数値は前回比で倍の高水準です。

頒布情報

アンケート結果と回答率から当日の全サークルの頒布数は40,000冊前後、参加者一人あたり6.2冊を購入しており、完売率は78.3%です。

前回より大幅な伸びを記録しており、倍となる4万冊の技術書が1日で流通しています。
完売率は14%伸びている一方、参加者一人あたりの購入数は1.0冊減少しました。
これは会場の混雑(ゆっくり見れていないほどの混雑)が原因と推測しています。

半年前の技術書典3と比べると(技術書典が浸透したという事実を考慮しながらも)
記録的な数字になっています。今回は天気にも恵まれました。

あくまでこれらの数値はアンケートをベースにした統計情報であり、
この先の需要がおちつくのか、更に伸びるのか推移を予測することは困難です。
運営ではサークル参加に関する体験・頒布の数値を統計情報として公開することが
サークル参加のための資料・頒布数決定の判断材料に活用できると考えています。

技術書典の開催も4回を数え、37%のサークルが「技術書典から執筆を開始した」と回答いただいています。
これらから情報を発信する手段としての技術書典、
また新しい技術に出会えるお祭りとしての技術書典が認知され始めているのでは、と感じています。
ありがとうございます。技術書典は、いろんな技術の普及を手伝いたいとの想いではじまりました。これからもそうあり続けたいと考えています。

主宰雑感

技術書典4ではサークル申し込み数も異次元の伸びでした。現時点では技術書典5も同様の傾向が続いています。
新刊を発行するサークルが95%を超えていること、頒布部数が1000に迫るサークルが複数出ていること、
いずれも高い関心、技術書典が新しい技術書のかたちとして認知が進んだ結果だと感じています。

主宰としても毎回が新しいイベントと思えるほどの違いがあります。気を抜かず安全に良い体験ができるよう最大限の努力し、運営しています。
今後、規模が拡大する場合でも部数やジャンルにはこれまで以上に振れ幅がでてくるはずです。

サークルの体験向上に繋げるアンケート

コミュニケーションについて

1:全然なかった~5:十分あったの5段階評価です。

話しやすさの面については前回より悪化しています。参加者数の6,380名は5時間程度にわたって入場制限がかかる
人数のため、頒布だけでも大変だったことが伺えます。

展示について

「見本誌による説明」「実演を行った」「タブレット、PCによる展示」「ポスターの掲示」「お品書きの用意」「運営が用意したお品書き、QR利用」
「その他」からの多肢選択式です。展示方法は見本誌、実演、タブレットによる展示が一般的でした。
展示・頒布にかかる手間ははじめての参加者には難しい場合もあるので運営によるサポートも行っています。

次回会場について

次回の開催地は7割が拡大を指示する結果となりました。参加者数の増加がおもな要因と考えられます。
これらファシリティの事情を総合的に鑑みて、次回の技術書典5では3倍の面積を誇る池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)へ変更いたします。技術書典ならではの盛り上がりを参加者全員で作っていきたいです。

次回参加について

今回もきわめてよい回答です。ありがとうございます。次回は場所が変わりますが、よりよいイベントを目指して改善を続けてまいります。

技術書典5 is coming.

技術書典5は2018年10月8日に 池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)で開催します。
ただいまサークル申し込みを受付中です。本エントリを読んで興味をもった方は是非サークル応募をお願いします。

来場者数は8000名を想定して技術書典4を踏まえてスムーズに運営できるようスタッフ一同頑張ってます。

技術書典3サークル参加アンケート結果と分析

技術書典 代表 @mhidaka です。
技術書典4のサークル参加申込受付にあわせて技術書典3のサークル参加アンケートを公開します。

技術書典とは

技術書典とはTechBooster(mhidakaが代表の技術書をかくサークル)と達人出版会(takahashimが代表の電子技術書出版社)が主宰している技術書イベントです。
広く技術のことについて知れるお祭りです。

技術書典4は2018年4月22日開催、技術書典2と同じく春場所です。前回に引き続き秋葉原UDXホール(アキバ・スクエア)です。
1月24日 23:59までサークル参加受付中です。
本エントリを読んで興味がでたら是非お願いします。

技術書典3開催情報(振り返り)

第3回 技術書典
日時:2017年10月22日(日)11:00~17:00
場所:秋葉原 UDXホール
サークル参加:合計193サークル(個人170・企業23)
来場数:延べ3,100人、実人数2,750人

第3回は風雨のなかでの開催となりましたが新規導入の整理券システムにより行列の発生や混乱もなく開催できました。当日の様子は次がわかりやすいです。

行列問題を解決すべく整理券システムを導入、入場待機用の見本誌会場やくつろげる戦利品会場を用意していました。
整理券システムの副作用で一般来場者、出展者数ともにユニークユーザー数が把握できるようになりました。

参加者数は延べで3,100人、実人数で2,750人です。
実人数の計測手法は、整理券の配布数を採用しているため実際に入場していない人もすこし居そうです
(延べ人数は入場時に人力でカウントしてます)。次回以降はより実態をあらわす実人数での指標に変更していきます。
なお第2回開催が延べ3,400人(入場時カウントの総数)でしたので差分は300人です。

はじめての秋開催ということでサークル参加、一般参加ともに参加者数が読めないかたちでスタートしましたが
ふたを開けてみると風雨に負けず熱気覚めやらぬ第3回になりました。
入場いただいた一般参加者のみなさん、当日参加いただいた出展者のみなさん、ありがとうございました。

ウェブ上には参加レポートなどがあります。さがしてみてください。

以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。あわせてどうぞ。

本の対象範囲

技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?

技術書典はハード、ソフト、機械、科学、エンジニアリングに関わるその他ライフスタイルや考察など技術ジャンルを問わず
「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。

アンケート結果

アンケートは104サークルから回答をいただきました(回答率53.9%)。ありがとうございます。

アンケート結果は過去に学び未来を掴み取る統計情報として毎回まとめているものです。
技術書典4での確固とした指標になる!という感じではありませんし、各項目必須ではない&多値回答可能ですので合計値が104になるわけでもありません。

参加サークル調査

執筆経験について

執筆活動について尋ねました。「執筆は初めて」「コミケなど他のイベントに参加したことがある」「商業誌、ライティング、レポートなど商業でも活動している」「その他」からの多肢選択式です。

今回は初めての人が約25%です。前回のアンケートでは22%でしたので微増です。

商業誌への寄稿、著書がありプロとして活躍されている方は20%、また自由投稿として技術書典から執筆を開始したとの回答が13%ありました。
今後、技術書典が回を重ねるごとに増えていくことになりそうで嬉しい限りです。

技術書典では初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。

https://techbookfest.connpass.com/ メンバーになると勉強会の開催時に通知が届きます。
プロの編集さんや出版社さんからゲストをお招きしています。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。

持込部数

当日、持ち込んだ数はサークル単位では平均160部が持ち込まれています。

前回から新刊と既刊に分離して計算しているのでこちらも掲載しておきます。
ここでの新刊は技術書典にはじめて出した本という定義です。100%今回はじめて書き下ろした技術書ではないので注意してください。

  • 全体:平均164部、最頻値100部、中央値113部
  • 新刊:平均117部、最頻値100部、中央値100部
  • 既刊:平均 87部、最頻値 50部、中央値 50部

既刊の増加傾向があります。これは技術書典2で頒布したものを継続して取り扱っているためでしょう。
新刊が用意できたサークルについては中央値が78から100に増加し、最頻値と一致しました。用意する部数の指標が100部となっているようです。

平均的なサークルでは1種あたり100部を目処に新刊と既刊の持ち込み比率は10対4、おおよそ4割のサークルで既刊を扱っています。

前回に引き続き、価格帯はアンケートを取っていません。観測範囲では500~1000円が多かったですが、
無料や数百円のものから2000円を超えるものまで幅広くありました。TechBoosterは1冊1000円ですが、価格と売り切れの相関は強くありません。
一般参加者は純粋に面白いと感じた本を買っているようです。

頒布部数と完売率

当日の頒布部数はサークル平均119部、完売率は64.7%です。前回比で14ポイントの減少です。来場者数が10%程度減少していたこと、大規模開催2回目ということを踏まえると多少の低下は違和感がありません。風雨というコンディションで持ち込んだ本の6割強を頒布した実績は評価が分かれますが、ポジティブにいえば底堅い需要、ネガティブにいえば天候に影響されるというイベントの特性が数字に現れています(また同日は衆議院の総選挙もありました)。

サークル単位では40%のサークルで完売(書籍が品切れ)を起こしています。
早いサークルで12時までに完売(全体の10%)、14時にかけてさらに20%が、15時までに全体の40%のサークルで
新刊、または既刊いずれかが完売になっています。前回比で10ポイント程度減少しています。

当日は開場直後(1時間以内)に新刊が売り切れたサークルが10%程度ありました。こちらは前回比で5ポイント上昇しています。
人気のある新刊が早期に売り切れたことがわかります。
全体を通しても14時(開始3時間)の段階で30%のサークルの頒布物(新刊or既刊)がなくなっています。

頒布部数のトレンド

この図はアンケートをもとに横軸に持込部数、縦軸に頒布数で新刊を散布したものです(データは加工しています、同じ場所へのプロットは重なってしまっています。このために完売した新刊数が少なく見えています)。
赤色で書き足したラインが完売線です。プロットしたポイントにかぶらないよう多少上に引いてます。補助線のようなものだと考えてください。青いラインが全体の平均を示すトレンドライン(平均線)です。紙の本を持ち込むことが多いため、横軸の100部、150部、200部に集団があります。これは印刷所の都合です。100部までは細かい発注が可能ですが、以降は単位が大きくなるためです。

赤い線に近いと完売で供給が需要を満たしきれなかったケースです。青い線を下回っているケースは供給過多となってしまったケースです。新刊部数が100部を超えると多くの場合、青い線を上回っています。需要予測に対応できている中堅以上のサークルといっていいでしょう。最も集中している横軸が100部の付近では青い線(トレンドライン)を下回るケースが目立ちます。50部以下では予測が難しく、人気が出た場合、すぐさま赤い線(完売)に衝突します。これはニッチなものがウケた、または新技術が爆発的に伸びるなどさまざまな要因が絡み合った結果でしょう。

頒布情報

アンケート結果から当日の全サークルの頒布数は20,000冊前後、参加者一人あたり7.2冊を購入しており、完売率は64.7%です。
(今回から実人数でのカウントのため、1人あたりの購入数は見かけ上増えていますが延べ人数でも前回とほぼ同じ水準です)

前回より大幅な落ち込みを心配しましたが、あいかわらず2万冊の技術書が1日で流通しています。
今回は天気に恵まれませんでした。この数字が底だと見るべきか、需要がおちつき今後も同様の傾向で推移していくのかは不明です。
新しい傾向としては、まとまった数の新刊を用意したにもかかわらず1割のサークルが開始1時間で在庫がなくなるという現象は人気の過熱(またはその前兆)を見せているのかもしれません。一方、需要予測は難しく、100冊を用意したもののトレンドラインを下回ってしまうケースも散見されています。参加者からのフィードバックとしては頒布されているのか完売しているのか、またどのような内容かわかりにくいという声もありました。mhidakaが見聞きした限りでは変な技術書というのはあまりありません。本の内容はよいにもかかわらずブースでのレイアウトや表紙などぱっと見たときに良さを伝えきれずにいる可能性があります。

さらに調査したところ、意外なことに「執筆がはじめて」を選択したサークルのほうが完売率が高く75%を超えていました。
念のため持込部数を確認しましたが、平均100部強、中央値も100部と全体との差異はありませんでした。はじめてのチャレンジということで多くの調査や準備があったとはいえ、よい結果に驚いています。

反対に「コミケなど他のイベントに出展したことがある」場合は完売率は57%です。既刊の持込が増えたことから単純に前回の頒布で入手した、夏コミですでに入手していたという事情が考えられますが技術書典では参加者は新しい技術や見たこともない技術書と出会いにきており、新刊がシリーズであったり既刊(を発展させたもの)であったりする場合は定着がおきて頒布数への影響が小さいという状況であるかもしれません。

執筆がはじめての人が受け入れられやすい現状は、技術書典の継続開催には朗報といえます。

雑感

コミケに参加する層(サークル参加者・一般参加者)にとっては夏と冬の短い期間での開催です。新刊を用意しづらい時期というのは少なからず影響があったのではないかという直感があります。かくいうTechBooster(mhidakaが主宰するサークル)も新刊を1冊しか用意できませんでした。

技術書典では新刊の定義を「技術書典において初めて頒布するもの」としていましたが、さらなる分析のためには詳細な分類を用意するなどアンケートの工夫が必要と考えています。また技術書典4のサークル申し込みの状況を見ていると、これまでとは異次元の速度で応募数が増えており、技術書典3で本当に落ち着いたのか、主催者自身も判断できていません。

台風かつ衆議院選挙とも重複するという日程での開催となり、傾向を分析するだけでも特別な要因が多く、なかなかわかりません。
頒布にかかわることは大事な要素ではあるもののすべてではありません。適切な数値を出していくことで、サークル参加者、一般参加者が技術書典に参加して楽しかったなと感じ、また次も行きたい、新しい技術に出会えてよかったといえるイベントを目指していきたいと考えてます。

サークルの体験向上に繋げるアンケート

コミュニケーションについて

1:全然なかった~5:十分あったの5段階評価です。

話しやすさの面については前回(も雨だったこともあり)大きな差はなさそうです。今回の配置は人が固まることもなくスムーズに流れており、
好評でした。

展示について

「見本誌による説明」「実演を行った」「タブレット、PCによる展示」「ポスターの掲示」「お品書きの用意」「その他」からの多肢選択式です。展示方法は見本誌、実演、タブレットによる展示が一般的でした。お品書きの項目がやや伸びています。

サークル入場について

今回からサークル入場は事前送付したチケットを利用する形に切り替わっています。半券での再入場など、おおむね好評でホッとしています。
サークルチケットは出展者さんが楽しんでもらえるかな、とデザインなども工夫したものを使いました。

一般入場について

今回より列形成をなくし、整理券システムでの順次入場に変更しました。出展者からは概ね好評と受け止められています。

次回参加について

今回もきわめてよい回答で驚いています。ありがとうございます。次回もよいイベントになるように改善していきます。

おまけ

次回開催では晴天祈念を予定に組み込みます。

技術書典4 is coming.

技術書典4は2018年4月22日にアキバ・スクエア(秋葉原UDXホール)で開催します。ただいまサークル申し込みを受付中です。本エントリを読んで興味をもった方は是非サークル応募をお願いします。

来場者数は3500名を想定して技術書典3を踏まえてよりスムーズに運営できるようスタッフ一同頑張ってます。

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