技術書典5サークル参加アンケート結果と分析

技術書典 代表 @mhidaka です。
技術書典6の開催にあわせて技術書典5のサークル参加アンケートを公開します。

技術書典とは

技術書典とはTechBooster(mhidakaが代表の技術書をかくサークル)と達人出版会(takahashimが代表の電子技術書出版社)が主宰している技術書イベントです。
広く技術のことについて知れるお祭りです。

技術書典6は2019年4月14日(日曜日)開催、技術書典5と同じく池袋サンシャインシティ2F展示ホールD(文化会館2F)です。
本エントリを読んで興味がでたらぜひお立ち寄りください。

技術書典5開催情報(振り返り)

第5回 技術書典
日時:2018年10月8日(祝・月)11:00~17:00
場所:池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)
サークル参加:合計470サークル
来場数:10,340人(入場時延べ)

第5回は池袋サンシャインシティ2F展示ホールDでの初開催でした。たいへんな盛り上がりで技術書典としてはじめての来場者数10,000人を突破しました。
事故なく盛況だったことは出展参加者、一般参加者をはじめみなさまのおかげです。

運営としては、これまでの3倍の面積3,000平方メートルでの初オペレーションです。万全の準備で挑みましたが
当日は数時間にわたって入場待ちの行列が発生し、各種メディアの取材が行われるなど予想を超えた人気ぶりでした。

会場では技術書典3で好評だった見本誌会場が復活するなど大きな会場を活かした構成を採りました。
参加者数は一般来場者を入口でのカウントとサークル入場者数を合算した10,340人です。
この人数は、入場フリーとなった以降の再入場を分離していません(延べ人数です)。

第4回の参加者は6,300名でしたので一気に150%の規模に達しています。サークル数も200サークル程度が増加しています(ほぼ倍増)。
ウェブ上には参加者による来場レポートなどがあります。さがしてみてください。

以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。あわせてどうぞ。

本の対象範囲

技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?

技術書典はハード、ソフト、機械、科学、エンジニアリングに関わるその他ライフスタイルや考察など技術ジャンルを問わず
「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。

アンケート結果

アンケートは151サークルから回答をいただきました(回答率32.1%)。回答いただきました出展者のみなさん、ありがとうございます。

アンケート結果は過去に学び、未来を掴み取る統計情報として毎回まとめているものです。
次回開催の参考に使うことを想定していますが確固とした指標ではありません。各項目は必須ではない&多値回答可能ですので合計値が151になるわけでもありません。
質問の文言など見切れ対応、その他および自由回答を画像から削除するなどグラフは適宜加工しています。

参加サークル調査

執筆経験について

執筆活動について尋ねました。「執筆は初めて」「コミケなど他のイベントに参加したことがある」「技術書典から執筆を開始した」「商業でも活動している」「その他」からの多肢選択式です。その他については割愛しています。

今回は初めての人が約43%です。前回のアンケートでは25%でしたので割合としては増加しています。会場が大きくなったことが寄与していると
考えています。商業誌への寄稿、著書がありプロとして活躍されている方は18.5%、
「技術書典から執筆を開始した」との回答は35.8%です。

技術書典が発表の場として定着してきたこと、コミュニケーションの場として認知され始めてきていることが背景にありそうです。

技術書典でははじめての人向けのサポートを充実していきたいと考えており、
初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。

https://techbookfest.connpass.com/ メンバーになると勉強会の開催時に通知が届きます。
技術書典ならではの工夫、編集や出版のサポートを目的とした場所です。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。

持込部数

当日、持ち込んだ数はサークル単位では平均226部です。
新しく書き下ろした新刊と過去の技術書典で配布した実績のある既刊に分離して計算しているので内訳も掲載しておきます。

  • 新刊:平均120部、最頻値 100部、中央値100部
  • 既刊:平均 60部、最頻値 20部、中央値 40部

新刊に関しては平均値が20%増加、最頻値が100部に増加しました(第4回では最頻値は60部でした)。
既刊はやや趣がことなって最頻値が20部に減少して平均値、中央値の2つは、ともに増加しています。

新刊頒布
既刊頒布

持ち込み傾向をみるとこれまで通り95%超のサークルが新刊を用意しています。
既刊については大幅に減っており32%です。第4回のアンケートは50%弱を記録していました。

  • 新刊:ほぼすべてのサークルで用意。平均 1.4タイトル(1サークルあたり)
  • 既刊:3割のサークルで用意。平均はサンプル数減少伴い割愛

なお新刊については比較的、読み取りやすい数字がでていますが既刊は、今回から急激にサンプル数が減少しているため
踏み込んだ分析が行えていません。しかしながら次の傾向があることがわかっています。

既刊を1または2種持ち込む場合(既刊があるサークル参加者のうち60%が該当)に部数は大きめとなり、平均値を超えています。
4種以上を持ち込む場合(25%が該当)では最頻値または中央値に近づく傾向にあります。
これらの差はサークル参加している出展者の頒布方針が反映されていると判断しています。

新刊については次のとおりです。

頒布傾向

平均的なサークル像はこれらを組み合わせた数字としてざっくり100~200冊を持ち込み、
新刊1種120部を目処に新刊と既刊の持ち込み比率は10対3です。おおよそ3割のサークルで既刊を扱っています。
この数字は「新刊を落とした」という状況が大変少なかったことを示すとともに、
1サークルあたり新刊だけで1.4タイトルという複数の技術書が生み出されてる状況をあらわしています。

今回の技術書典5は会場が広くなったにもかかわらず、サークル申込は高水準を維持しています。
タイトル数が多めにでた数字はこのあたりの事情で合同サークルの誕生が影響していると推測しています。

サークルと持込部数、頒布価格の関係

前述の結果を踏まえてアンケート回答者のうちサークル調査「執筆は初めて」群(全体の43%、初参加)と「過去に執筆経験がある」(同57%、2回以上)
に分けてサークル単位での持込部数を確認してみたところ次のような差が生まれました。

  • 初参加 持込平均:172部、1.1タイトル
  • 2回以上 持込平均:270部、1.6タイトル

これらはサークル単位の分析であるため、新刊・既刊の数字が合算されている点に注意してください(またアンケートは自由回答なので合算しても結果が一致
しません)。また全サークルの平均持込数が226部であることは前述のとおりです。

結果からは部数の決定にあたって出展者の参加歴がもっとも大きなファクターと想像しています。
初参加のサークルは持ち込み数を相対的に少なくし、在庫リスクを回避しています。
2回以上参加している出展者は完売した際の機会損失リスクを減らすために多めに持ち込む傾向が強くでています。
いずれにせよ数字の大小ではなく、相対的な差を表している数字と捉えるべきでしょう(第4回に比べて持ち込み部数そのものは増加傾向)。

価格帯については無料や数百円のものから2000円を超えるものまで幅広くありました。
今回、頒布データを見る限りは価格と売り切れの相関は強くありません。1000円でXXページ必要といった内容は導出できませんでした。
一般参加者に響いて「面白いな」「これなら読みたいな」と感じたら価格をほとんど気にせず購入しているためと考えています。

直感的にも「会場で見かけた面白そうな本が次も残っていることは考えにくいため良いと感じたらすぐに買う」という行動は、
理にかなった戦略ではあります。私もそう行動する可能性が高いです。

なお頒布の詳細や価格帯の詳しい分析は「かんたん後払い」統計情報の解説記事をお待ち下さい(鋭意準備中です)。

頒布部数と完売率

当日の頒布部数はサークル平均157部、完売率は51.0%です。これは前回比で6.5%の減少および21ポイントの減少です。

アンケート結果

紙の頒布終了に伴い、電子書籍による頒布を継続との回答が4.0%ありますがこちらはグラフからは除外しています。
51.0%という結果は参加サークル数も影響しているほか、技術書典へ2回以上参加しているサークル出展者は多くの部数を持ち込んでいる現状があります。
このことが完売率の低下に寄与しているといえますが会場の頒布物のうち51%の品種が無くなる結果は、やはり驚くべき状況です。

早いサークルで12時までに完売(全体の10%)、13時にかけて15%が、15時までに40%のサークルで新刊、または既刊いずれかの品種が完売になっています。

頒布部数のトレンド

当日は開場直後(1時間以内)に新刊が売り切れたサークルが5%程度です。
会場が大きくなり、一気にたくさんの一般参加者が入場可能になったことから開始直後の頒布が加速されたことが伺えます。

頒布情報

アンケート結果と回答率から当日の全サークルの持込部数は106,000冊前後、参加者一人あたり7.5冊を購入しており、完売率は51.0%です。
75,000冊の技術書が1日で流通しました。流通量は大幅な伸びを記録した第4回と比べても、さらに1.9倍となる急成長ぶりです。

技術書典5では完売率は21%減少しましたが、参加者一人あたりの購入数は1.3冊上昇しています。
これはアキバ・スクエアを会場としていたときの課題であった混雑(ゆっくり見れていないほどの混雑)が解消した結果と推測しています。
会場の広さを活かし、頒布数は10万冊の大台を超え、うち75%となる7.5万冊が参加者の手に渡りました。
参加者1人あたりの購入数7.5冊は大きな数字ですが統計上、まだ伸び続けています。

会場を変えておちつくかと思っていた技術書典ですが、天候にも恵まれたとはいえ記録的な数字を引き続き伸ばす結果となっています。
あくまでこれらの数値はアンケートをベースにした統計情報であり、この先の需要がおちつくのか、更に伸びるのか推移を予測することは(またしても)困難です。

運営では技術書典に関する体験・頒布に関する統計情報を公開することが
サークル参加のための資料・頒布数決定の判断材料に活用できると考えています。

技術書典5では43%のサークルが「技術書典から執筆を開始した」と回答いただいています。
情報を発信できる場として、また新しい技術に出会えるお祭りとしての技術書典が認知され始めていると思うと大変うれしいです。
皆様のご協力、誠にありがとうございます。技術書典は、いろんな技術の普及を手伝いたいとの想いではじまりました。これからもそうあり続けたいです。

主宰雑感

実は2019年4月開催の技術書典6ではサークル申し込み数も過去最高を記録しています。
当選倍率も高水準で推移しており、もはや3000平方メートルではまったく足りないことは明白です。
このような状況は技術書典7で、苦心はあるものの緩和できると考えていますが、4割にのぼる新規参加のみなさま、リピートして頂いてる6割の参加者のみなさま、
どちらにとってもアンケートをベースとした統計的な数字は参考になるはずです。

新刊を発行するサークルが95%を超えていること、頒布部数が1000をやすやすと超えるサークルが複数出ていること、
いずれも高い関心、新しい技術書のかたちとして技術書典の認知が進んだ結果でしょう。

主宰としても毎回が新しいイベントと思えるほどの違いがあります。気を抜かず安全に良い体験ができるよう最大限の努力し、運営しています。
規模が拡大している現状を鑑み、一部の統計値については初めての参加と2回以上で切り分けて分析を行うように工夫しています。
変化を許容し、これまで以上に面白い場となることを願っています。

サークルの体験向上に繋げるアンケート

コミュニケーションについて

1:全然なかった~5:十分あったの5段階評価です。

話しやすさの面については前回より悪い評価は改善しています。しかし参加者数が10,340名を数えることになるため
大幅な改善はありませんでした。あいかわらず頒布だけでも大変な状況が伺えます。

展示について

「見本誌による説明」「実演を行った」「タブレット、PCによる展示」「ポスターの掲示」「お品書きの用意」「運営が用意したお品書き、QR利用」
「その他」からの多肢選択式です。展示方法は見本誌、実演、タブレットによる展示が一般的でした。
展示・頒布にかかる手間ははじめての参加者には難しい場合もあるので運営によるサポートも行っています。

サークル意識調査

「会場での会話・頒布を通じた充実感、楽しさ」「読者からの反響」「収益(売上などで利益が出ること)」
「趣味性(自分のやりたいことができていること)」「実益(技術を発信することで知名度が上がる、有名になるなど仕事につながること)」
「コミュニティ(友人・知人とのつながりを持てること)」「技術分野での貢献(より多くの人へ技術を届けること)
からの多肢選択式です。

どれか特定の要素に偏ることなく、まんべんなく意義を感じる要素があることが読み取れます。
特に多かった項目が「充実感、楽しさ」および「趣味性」の2つです。さらに「読者からの反響」「技術分野での貢献」と続いています。

次回参加について

いつもありがとうございます。今回も望外の良い回答となりました。次回も新しい取り組みを通じて、よりよいイベントとなるように改善を続けていきます。

技術書典6 is coming.

技術書典6は2019年4月14日に池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)で開催します。
本エントリーを読んで興味を持ったかたは気が向いたら必ずきてください。あと晴れるように一緒に祈ってくれると嬉しいです。

来場者数は10,000~15,000名を想定してスタッフ一同頑張ってます。

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