技術書典 代表 @mhidaka です。
技術書典7の開催にあわせて技術書典6のサークル参加アンケートを公開します。
技術書典とは
技術書典とはTechBooster(mhidakaが代表の技術書をかくサークル)と達人出版会(takahashimが代表の電子技術書出版社)が主催している技術書イベントです。
広く技術のことについて知れるお祭りです。
技術書典6開催情報(振り返り)
第6回 技術書典
日時:2019年4月14日(日曜日)11:00~17:00
場所:池袋サンシャインシティ2F 展示ホールD(文化会館ビル2F)
サークル参加:合計463サークル
来場数:10,300人(入場時延べ※)
第6回は池袋サンシャインシティ2F展示ホールDでの2回目の開催でした。前回の技術書典5に引き続き、来場者数10,000人を突破しています。混雑緩和を目的に時限式の有料化を初めて実施しましたが、それでも時間帯によっては行列が発生し、完全に行列が解消されたのは15~16時でした。
参加者数は一般来場者を入口でのカウントとサークル入場者数を合算した10,300人です(入場フリー後の出口からの入場も含まれています)。第5回の参加者は10,340名ですので人数は同数といえそうです。計測方法は数取器、いわゆるカウンターです。今回は混雑対応を優先したため計測担当者が減り、5%~10%程度の取りこぼしがあるかもしれません。これは当日の抽出検証による誤差確認の結果です。
3,000平方メートルでのオペレーションは2回目ですが列整理、構内配置、目印の設置など改善を目的とした施策を行って動線確保&混雑緩和に努めました。当日は各種メディア取材も入りイベントとしての定着を感じています。なお出展参加の倍率は約1.5倍で大変に高い水準です。注目を集めたにもかかわらず事故なく終えられたことは出展参加者、一般参加者をはじめみなさまのおかげです。
ウェブ上には参加者による来場レポートなどがあります。さがしてみてください。以下はこれまでの技術書典のアンケート結果です。あわせてどうぞ。
本の対象範囲
技術書とは、「ITや機械工作とその周辺領域について書いた本」を指します。ソフトウェア、ハードウェア、開発環境、コンピュータサイエンスからその他科学・工学全般などのジャンルを対象としています。たとえばプログラミング解説書のように現存する技術要素の解説を行うもの、架空の工学、未知の科学技術なども対象です。また作ってみた、やってみた、など体験談や考察、上記のジャンルに付帯した開発効率を高める方法のようなライフスタイル、実体験も歓迎します。自分の積み重ねてきたマニアックな技術や成果、ノウハウを詳細に書き記し世に広めたいとは思いませんか?
技術書典はハード、ソフト、機械、科学、エンジニアリングに関わるその他ライフスタイルや考察など技術ジャンルを問わず「技術」をテーマにしたお祭りです。たとえばTechBoosterは主にソフトウェア、あとハードウェアをチョットデキル感じです。
アンケート結果
アンケートは241サークルから回答をいただきました(回答率52.1%)。回答いただきました出展者のみなさん、ありがとうございます。
アンケート結果は過去に学び、未来を掴み取る統計情報として毎回まとめているものです。
次回開催の参考に使うことを想定していますが確固とした指標ではありません。各項目は必須ではない&多値回答可能ですので合計値が241になるわけでもありません。
質問の文言など見切れ対応、その他および自由回答を画像から削除するなどグラフは適宜加工しています。
参加サークル調査
執筆活動について尋ねました。「執筆は初めて」「コミケなど他のイベントに参加したことがある」「技術書典から執筆を開始した」「商業でも活動している」「その他」からの多肢選択式です。その他については割愛しています。
今回は初めての人が約27%です。前回のアンケートでは43%でした。割合の減少は出展参加の倍率が上がったことが影響していると想像しています。一番下グラフタイトルが見切れていますが「商業誌への寄稿、著書があり」プロとして活躍されている方は18.4%です。
第6回での「技術書典から執筆を開始した」回答は前回の35.8%から大きく伸びて55.6%です。はじめて過半数を超えました。発表の場としての定着、コミュニケーションの場として認知されることを目指していきたいです。
技術書典でははじめての人向けのサポートを充実していきたいと考えており、初心者向けの技術書の制作、執筆勉強会を定期的に開催しています。
https://techbookfest.connpass.com/ メンバーになると勉強会の開催時に通知が届きます。技術書典ならではの工夫、編集や出版のサポートを目的とした場所です。技術書執筆に際しての相談や添削が受けられます。
持込部数
当日、持ち込んだ数はサークル単位では平均291部です。新しく書き下ろした新刊と過去の技術書典で配布した実績のある既刊に分離して計算しているので内訳も掲載しておきます。この内訳は1品種ごとの統計値で、サークル単位の平均ではない点に気をつけてください。
- 新刊1品種あたり:平均155部、最頻値 100部、中央値100部
- 既刊1品種あたり:平均 60部、最頻値 30部、中央値 30部
新刊に関しては第5回に比べて平均値が20%増加しています。増加傾向が続いており第4回と比べると実に1.5倍に成長しています。最頻値、中央値はともに100部です。既刊は品種数が少ないこともあり平均60部、最頻値および中央値はどちらも30部です。
持ち込み傾向をみるとこれまで通り95%超のサークルが新刊を用意しています。
既刊は46%です。大幅に減った前回の32%から復調し、第4回アンケート相当の水準に戻りました。
- 新刊:ほぼすべてのサークルで用意。平均1.4タイトル(1サークルあたり)
- 既刊:4割強のサークルで用意。平均タイトル数は割愛(サンプル偏りにつき)
なお既刊では1〜2品種持ち込む場合の部数は大きめです(既刊があるサークル参加者のうち75%が該当)。
この場合は100部、50部という単位ですが3品種以上を持ち込む場合(25%が該当)では最頻値または中央値を下回る傾向にあります。タイトル数が多い場合、そもそも持ち込み数も減っていることが伺えます。出展者の頒布方針が色濃く出るパラメータかもしれません。
新刊については次のとおりです。
アンケート結果を勘案すると平均的なサークル像は200〜300冊を持ち込み、新刊1タイトルあたり150部が目処です。サークルは1.4タイトルの新刊を用意しています(2タイトルを用意した時点で持込部数の合計が300部になる)。
既刊の持ち込み比率は10対4です。おおよそ4割強のサークルで既刊を扱っています。たとえば新刊を1タイトル150部、既刊を1タイトル100部用意していれば持込部数は合計250部です。
技術書典6でも「新刊を落とした」という状況が大変少なかったことを示すとともに、1サークルあたり新刊だけで1.4タイトルという複数の技術書が生み出され、持込部数が伸びている状況があります。
この状況は会場が広くなったことで来場者が増え、興味のある書籍を探す良いループに入っていると考えてよいかもしれません。依然としてサークル申込数・倍率は高水準を維持しています。タイトル数が多めにでた数字はこのあたりの事情で合同サークルの誕生が影響しているでしょう。
サークルと持込部数、頒布価格の関係
前述の結果を踏まえてアンケート回答者のうちサークル調査「執筆は初めて」群(全体の27%、初参加)と「過去に執筆経験がある」(同57%、2回以上)に分けた場合の持込部数は次のとおりです。
- 初参加 サークルあたり持込平均:200部
- 2回以上 サークルあたり持込平均:310部
これらは新刊・既刊の品種が合算されている点に注意してください(またアンケートは自由回答なので合算しても結果が一致しません)。結果からは部数の決定にあたって出展者の参加歴がもっとも大きなファクターであることが読み取れます(第5回アンケートと同じ回答傾向です)。
特筆すべきは持込部数の伸びであり、これは前回比で20%以上の成長があります。相対的には初参加のサークルは持込数を少なく、2回目以降は増える傾向ですが在庫リスクを回避しつつも完売した際の機会損失リスクを減らし、また来場者数の増加に合わせて多くの部数を持ち込んでいます。
価格帯については無料や数百円のものから2,000円を超えるものまで幅広くあります。頒布データを見る限り、価格と売り切れの相関は強くありません。詳しい分析は技術書典5の「かんたん後払い」統計情報の解説記事が参考になります。
なお頒布傾向に1,000円でXXページ必要といった内容は導出できていません。直感的には会場で見かけた面白そうな本が次も残っていることは考えにくいため「良いと感じたらすぐに買う」という行動は理にかなった戦略であり、一般参加者に響いて「面白いな」「これなら読みたいな」と感じたら価格をほとんど気にせず購入しているはずです。
頒布部数と完売率
当日の頒布部数はサークル平均187部、完売率は59.4%です。これは前回比で8.4ポイントの増加です。
59.4%という結果は単純に来場者の購入数が増えたことが理由に挙げられます。サークル数、来場者数に前回から大きな変化がないためです。これはイベントが認知されているまたは供給不足であったところに持込部数が増加し、需要を満たした側面が強いと推察しています。6割弱の品種がなくなっており、紙の書籍に絞ると64%が一般参加者へ届けられています(電子書籍のカードなどを除いた紙の持込部数と頒布数の比率)。
本項目は一般参加者の高い購買意欲を示しており、出展者や持ち込み部数の増加を十分に吸収できる需要がある可能性が高いでしょう。
早いサークルで12時までに完売(全体の14%)、13時にかけて全体の32%が、15時までに50%弱のサークルで新刊、または既刊いずれかの品種が完売になっています。
当日は開場直後(1時間以内)に新刊が売り切れたサークルが4%程度です。完売までの分布傾向に変化はありませんが全体的に前倒しされていると感じます。
頒布情報
アンケート結果と回答率から当日の全サークルの持込部数は205,000冊、完売率59.4%(品種ベース)、
参加者一人あたり10.8冊、合計111,000冊の技術書が1日で流通したと推測できます。
持込部数はほぼ倍増、実際に頒布があった技術書の部数も1.5倍の伸びとなりました。どこまでいくのか想像が追いつかない状況です。特筆すべきは参加者一人あたりの購入数です。10.8冊は前回比で3.3冊の増加、第4回から比べると4.6冊の上昇です。
技術書典6では混雑時でもお目当ての書籍を手に入れてもらおうと様々な取り組みをしています。配置位置を掲げた「配置のぼり」やサークルカットを掲載した「サークルべんりカード」など統一テンプレート化による発見容易性、わかりやすさへの取り組みが貢献しつつあると考えています。
かんたん後払いの利用率も高くなっており、運営としてもサークル配置場所への到達や購入への障壁を下げていくことで(場をオーガナイズすることで)面白い技術との出会いを推進できれば大変うれしく思います。
今回から電子書籍と紙を分離して集計(前回までは合算)していますが、紙だけをみても持込部数は135,000冊、流通は87,000冊です。単独でみても過去最高の数字を示しています。
紙と電子の流通比率は概ね78:22です。2割強が電子データ(PDF)で提供されているのは興味深い数字(一般的な紙と電子の流通比率より若干多いかなぐらいの数字)です。運営でも電子データの利用にまつわる問題を解決するため機能開発を続けています。
主宰雑感
会場を変えて広々と開催するはずだった技術書典ですが、記録的な数字を引き続き伸ばしています。
技術を得る場・技術的なコミュニケーションの場として機能していくことに期待が持てる結果となりました。
これらの数値はアンケートをベースにした統計情報であり、この先の需要が落ち着くのか更に伸びるのか推移を予測することは困難です。可能な限り過ごしやすい場作りを目指していきます。
技術書典に関する体験・頒布に関する統計情報を公開することがサークル参加のための資料・頒布数決定の判断材料に活用できると考えています。アンケートへの協力ありがとうございました。
6回の開催を経て技術書典では6~7割のサークルが「技術書典から執筆を開始した」層にあたります。
情報を発信できる場として、新しい技術に出会えるお祭りとして受け入れていただき、また一緒に技術書典を盛り上げてくださっていると感じており、大変うれしいです。皆様のご協力、誠にありがとうございます。技術書典は、いろんな技術の普及を手伝いたいとの想いではじまりました。これからもそうあり続けたいです。
技術書典6ではサークル申し込み数も過去最高を記録しています。当選倍率も高水準で推移しているため、解消すべく技術書典7では新しいチャレンジがあります。
主宰としても毎回が新しいイベントと思えるほどの違いです。気を抜かず安全に良い体験ができるよう最大限の努力し、運営しています。「かんたん後払いのダウンロード対応」「サークルべんりカード」「配置のぼり」「見本誌提出袋」など試行錯誤をしていきますし、本稿のように結果を公開して参加者へ還元する予定です。
新刊を発行するサークルが95%を超えていること、頒布部数が1,000を超えるサークルが複数出ていること、持込部数が平均の2倍となる600部を越える中規模サークルが増加していること、いずれも高い関心、新しい技術書のかたちとして技術書典の認知が進んだ結果ですが、まだまだ変化は続きます。今しばらくこの変化にお付き合いいただき、できれば毎回、新しい技術書典が生まれてくる姿を楽しんでもらえると助かります。
変化を許容し、これまで以上に面白い場となることを願っています。
サークルの体験向上に繋げるアンケート
1:全然なかった~5:十分あったの5段階評価です。
前回と傾向は変わりません。参加者数が1万人を越える状況が続いており、大幅な改善はありませんでした。あいかわらず頒布だけでも大変な状況が伺えます。
「見本誌による説明」「実演を行った」「タブレット、PCによる展示」「ポスターの掲示」「お品書き」「運営が用意したサークルべんりカードの利用」「その他」からの多肢選択式です。展示方法は見本誌、実演、タブレットによる展示が一般的でした。
展示・頒布にかかる手間ははじめての参加者には難しい場合もあるので運営によるサポートも行っています。
「会場での会話・頒布を通じた充実感、楽しさ」「読者からの反響」「収益(売上などで利益が出ること)」「趣味性(自分のやりたいことができていること)」「実益(技術を発信することで知名度が上がる、有名になるなど仕事につながること)」「コミュニティ(友人・知人とのつながりを持てること)」「技術分野での貢献(より多くの人へ技術を届けること)からの多肢選択式です。
どれか特定の要素に偏ることなく、まんべんなく意義を感じる要素があることが読み取れます。
特に多かった項目が「充実感、楽しさ」および「趣味性」の2つです。さらに「読者からの反響」「技術分野での貢献」と続いています。番外となりますが記述回答も大変多く、思い思いの楽しみ方をしていただいてます。
前回よりも趣味性やコミュニティ、読者の反応などを重視する声が増えています。技術コミュニティでのつながり、発表の場としての期待が伺えます。
99%超!いつもありがとうございます。今回も嬉しい回答結果となりました。次回も新しい取り組みを通じて、よりよいイベントとなるように改善を続けていきます。
技術書典7 is coming.
技術書典7は近日中に開催についてアナウンスできそうです!もし、情報を取りこぼしたくないというかたはTwitterをフォローいただくか、
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